雑記帳

デザインを盗むーその4-

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今月5日、東京五輪エンブレムデザイン盗用疑惑に対する佐野研二郎氏の記者会見がありました。そこでの釈明は、「類似とされている作品を見たことがなく、参考にもしていない」「自分のデザインは、世界に類のないオリジナルデザインである」と、ここまでは僕の場合と全く同じです。違うのは次、「(エンブレムデザインの)要素は同じものがあるが、デザインに対する考え方が違うので、(両者は)全く似ていない」としている点です。

僕がジェイ・マスラー氏の「街景」を見たとき「同じだ!」と思ったのは、その形にデザインした意図(考え方)についてでした。意図が同じなら同じ結果にたどり着いたとしても不思議はありません。そういう意味で、佐野氏の釈明は理屈に合っていると思います。それが事実と一致しているかどうかは別問題ですが。

 

僕の作品「vibration」は、原子の振動と物質の結晶をテーマにしたものですが、それだけではつまらないので、「何か人間の営みを感じさせる形が欲しい」ということで町並みのシルエットを最上部に配置することにしました。

しかし、生命そのものを想起させる形、例えば樹木の形などは使わないことにしました。

その部分の色を濃い目にすることで作品全体を引き締めようと思いました。

 

 

このギザギザに入り組んだ形は、大都会に林立する高層ビルの間の狭い空間から差し込む夕日の美しさをイメージしています。

具象的な建築物の形態を即座に連想することができない程度まで形をデフォルメさせた上で、全体を波のようにうねらせることで躍動感を出そうとしました。

 

「街景」を見たとき、僕が意図したデザインコンセプトと同一であることを瞬時に理解しました。

技法も色も違いますが、表現しようとしたイメージが全くと言ってよいほど同じなのです。

僕は顔から血の気が引いていくのをぼんやりと感じながら、その場に立ち尽くしていました。

 

ー続く

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