雑記帳
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北海道のいいところーその8-

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「行政というものはアートに対して実に無関心である」というのが我々アートに関わる人間のほぼ共通した認識ではなかったでしょうか?
しかし今年の春、北海道の行政がその認識を覆す画期的な冊子を発行しました。

                                                                          

”アートで北海道を旅しよう。”というキャッチフレーズで飾られている「北海道アートマップ」という冊子です。

マップですからA4サイズで40ページ程度の薄いものですけれど、北海道各地のアート活動を官民を問わずに多数紹介しており、元々興味のある人には便利な一冊、興味がなかった人々にも行ってみようかという気持ちを起こさせるに十分な内容です。

冒頭の”ごあいさつ”で高橋はるみ知事が、”「文化力」こそ豊かさの象徴であり、地域を変えるエネルギーになる”と述べていますが、正にその通りだと思います。
芸術文化や食文化、建築文化に服飾文化、”文化”と名のつくものはすべて我々の幸福感に直接結びついています。そして幸せの形は地域によって人によって違うものであり、その多様性を認めることでさらに文化が育つのだと思います。

かつてバブル経済の真っ只中にいたころ、「なんたって一番大切なのは経済力ですよ。経済あっての文化でしょ?文化にも金がかかるんだから」なんていう言葉をイヤというほど聞かされました。しかしこれは因果関係を取り違えています。幸せになるためにいくばくかの金は必要ですが、金があれば必ず幸せになれるというわけではありません。
経済を最優先させることで生まれるのは、効率主義と画一主義、大量消費と競争によって支えられる格差社会でした。その競争に勝って金持ちになった人々は、今幸せでしょうか?一方で大勢の不幸な人々を生み出しておきながら、自分だけが幸せになれるものでしょうか?

北海道はこの30年くらいの間に貴重な経験をしました。地域の活性化の御旗のもとに、カナダやドイツに中国など、地元になんの所縁もない外国文化を看板にした大事業が北海道の各地で展開され、そのすべては本州資本や多大な補助金で賄われていました。当初は雇用機会が増え、地元の若者が外国の民族衣装に身を包み、それが誇らしげにさえ見えたのですが、そんなものが長続きするはずもなく、現在はひとつも残っていません。残ったのは使い道のない施設と膨大な負債だけです。

「北海道アートマップ」を見て思うのは、そこで紹介されている各地のアート活動が、行政主導でもコンサルタント会社の助言でもなく、本州資本の介入でもなさそうで、その地域ならではの自発的な活動ばかりだということです。地域を変えようとしている人々のささやかな、しかし根強い”文化力”に行政がスポットライトをあてて応援しているという図が見えます。

中でも先月僕が泊まらせていただいた佐伯農場の活動はユニークです。
アートマップの記事では「地域の独自性への挑戦」というタイトルで紹介されていますが、農場の敷地内にアート作品が点在し、レストランや美術館があり、現在は宿泊所を建設中です。しかし何よりユニークなのは農場主の佐伯雅視さんが先頭に立って整備した”北根室ランチウェイ”です。
”ランチウェイ”って何?と大半の方が思われるでしょう。”昼食(Lunch)の道”ではありません。僕も先月まで知りませんでしたが、ランチとは”Ranch”,アメリカ西部にあるような大牧場の意味だそうです。つまり北海道の大牧場を横切る道のことで、通常は牧場の中を歩くことはできないわけですが、特別な許可をもらって全長約70kmのハイキングコースをつくりました。

詳細はこちら → 「北根室ランチウェイ

さて、その佐伯農場が街中に持っているギャラリーをお借りして、来月中旬より展覧会をさせていただくことになりました。
その件は次回に。

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