雑記帳
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天井裏から海の音

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我が家は現在、学校通りに面した住宅街の一画にありますが、8年前までは人里離れた農村地帯の一軒家に暮らしていました。
その頃の話です。

暑い夏の夜遅く、ビールを飲みながら茶の間でテレビを見ていると、天井の角で「ザザッ」という大きな音がしました。その音は連続しながら対角線上に天井を移動し、反対側の角で聞こえなくなりました。いったい何が起きたのか見当もつきませんでしたが、次の日の夜も同じことが起きました。
しかし今度は反対側から最初に音がした角に向かって、やはり「ザザーッ」という音をたてながらゆっくりと移動していきました。

三日目の夜も、その次の夜も同様の現象が起きて、最初は驚いて気味悪く思いましたが、慣れて余裕ができると、それが海辺の波の音にそっくりなことに気がつきました。目をつぶって聞けば、正に天井裏に穏やかな波が打ち寄せているかのようです。

一週間ほど経って、ようやくその正体に思い当たりました。どうやら天井裏に大きな蛇が住みついたらしいのです。そういえば、カツカツとうるさく天井裏を走り回り、時には台所や茶の間にまで現れていたネズミたちの姿が見えなくなり、気配さえも感じられなくなっていました。
実際にその蛇を見たわけではありませんが、「ザザーッ、ザザーッ」という天井裏の音を聞きながら、蛇が体をくねらせ横に移動する様を想い描くと実にピタリと一致してましたから、まず間違いはないでしょう。

この話を友人知人にしたところ、皆口を揃えて「それは縁起がいい」とか「吉兆だよ」とか言いました。蛇は多くの物語の中で忌み嫌われる存在となっており、実際にもかなり嫌われてるようですが、何故か家に住み着く蛇は「守り神」とまで言われて幸運のしるしのようです。

さてその後の我が家は、とりたてて幸運と思えるできごともなく、平々凡々とした十数年を過ごしてきました。でももしかすると、長い間何事もなく暮らしてこれたことが最高の幸運なのかもしれないなと思うのです。

今年の干支は巳。
”巳”に蛇の意味は本来なかったらしいのですが、まあそんなことはよしとしましょう。

                                                             

 

                                                                                                  

20年ほど前に作った蛇のステンドグラスを思い出しました。

こちらは”天井”ではなく、”天上”の蛇、つまり星座の蛇を表現したものです。
                                                                                                            

皆様にも何事もなき幸せな一年が訪れますように。

                                                                                                                                                                                                   

                                                                                                                

札幌地下街ポールタウン、ギャラリーステラ「夏の星座」より

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