雑記帳
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夢見る現場ーその2ー”下見”

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昨年の3月に初めてお問い合わせをいただいた仕事ですが、その後電話やメールでの打ち合わせを重ね、10月になって現場の下見に行ってきました。

本州の公立病院で、かなり大きな建物です。
(地名は、一部の関係者にご迷惑をかけるおそれがあるため、しばらく伏せさせていただきます)
僕への依頼は、吹き抜けの中庭に面したエレベーターホール5~8の各階に設置されるパーティションのデザインと制作です。パーティションは中庭への視界をふさぐように設置され、大枠の形状は決まっていますが、内部の仕切り方とガラスのデザインを提案しました。

デザインを考えるときの主な要件は3つです。
1、建築全体のコンセプトとの合致
  まず設計者の意図が最優先、次に全体の色彩計画やインテリアデザインに合わせます。

2、予算
  与えられた予算の中で使える材料と、かけられる手間を計算します。

3、納期
  完工までに間に合わせることができるデザインを考えます。

実を言うとこれらの要件3つについては、通常現場の下見に行く前にほとんど打ち合わせが終わっているものです。実際の下見で大切なのは、デザインのイメージを膨らませ、心に焼き付けるという作業です。そのために、必要な箇所の写真を撮り、関係者と現場で交わした大事な言葉をメモします。1枚の写真やひとつの言葉が、後でデザインの重要なヒントになることがあるからです。

                                                                                                                 設計やコーディネートの方々が、僕の下見を手伝ってくれました。

ここの部分に木製のパーティションが設置されます。

                                                                                                  
僕のデザイン案では、パーティションの内部を4段×9列に分割します。つまり各階36枚のガラス板を使用しますが、そのうちの5枚をエッチングガラスとし、残りは質感や透明度の違うカセドラルガラス4種を段別に使用します。

                                                                                            
下見を終えてからの僕の仕事は、エッチングガラスの加工をすること。
エッチングに使用する被せガラスは、1枚1枚が手つくりで個体差が大きいため、実際に問屋から届いたガラス板を見てからでなければデザインの細部を決めることができません。現場の下見をしながらイメージを膨らませることは大事ですが、決して強く細かく明確に固定することはせず、大きくぼんやりとさせたたまま工房まで持ち帰ります。

下見が終わり、さらに打ち合わせをして、外に出たのは夕暮れ時でした。

茜に染まった空の下、ずらりと並んだ数十台の工事関係車。
遠くに腕をたたんで直立したクレーンのシルエット。
ブルドーザーの泥を洗い流す水音が聞こえ、うっすらと流れる煙にセメントの臭いが混じります。
大きな工事現場に来ると、汗水流して朝から晩まで働いた若き日の自分がどこかにいるような気がします。

ー続くー

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