雑記帳
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続・虹をつかむ男

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美術の道に進む決心をし、本格的に勉強を始めたのは高校3年生のときでした。
そのころ高文連の展覧会に出品するため描いた油絵です。

 

タイトルは「縄跳びをする少女」。
F50号です。

ベン・シャーンの作品からタイトルとイメージを借りて、自分の課題に挑みました。

自分で決めたこの絵の課題は、”現実と空想”を融合させ、”具象とも抽象”ともつかない絵を描くことでした。

虹色に描いたのは靉嘔(あいおう)の影響だったかもしれません。

 

しかしこの時、何よりも僕に影響を与えていたのは一冊の短編小説集でした。

 

 

1962年に早川書房から出版された異色作家短編集の第9巻「虹をつかむ男」です。
著者は米国人ジェームズ・サーバー、出版物のタイトルにもなっている作品の原題は「The Secret life of Walter Mitty」ですが、1947年にダニー・ケイ主演で映画化され、1950年に日本公開されたとき配給会社が例によってタイトルを創作し、それがそのまま後の出版物のタイトルにも使用されました。原作は短編ですからわずか数ページの作品ですけれど、映画化に際してストーリーを付け足し、いかにもアメリカ的な軽妙洒脱ハートフルコメディーとなっています。
少なくとも映画に対しては、日本のタイトルの方がはるかに内容を的確に表していると思いますが、原作は”秘密の人生”と言うだけあって、ミステリアスに混乱し、コミカルでありながらもどこかに暗いトーンが響く、複雑で重みのある作品です。

そうだ!そうだった、この小説に出会った高校3年生のとき、現実と空想が明確な境目もなく入り混じる内容に感嘆し、こんな絵を描きたいと思ったのでした。

高校の美術部で描かされる絵は、美大の受験を目標にしていますから、正確なデッサンと具象的な描写を前提にしたものばかりです。その中であえて自分が描きたいと思うものを描いた、言わばその後の僕の人生を示唆する記念碑的作品です。

その割には随分とないがしろにしてきましたが、あらためて見ると青春時代のひたむきさや暗さ、真っ直ぐな部分と歪んだ部分、あらゆることがエネルギーとして伝わってきます。

よし、これで行こう!僕の原点はここにある!

計らずも、昨年描いたステンドグラスデザイン画のタイトルは「時は虹色に輝く」でした。
この原画によるステンドグラスの納期は7月末日、それまでの間、時折制作の様子をお伝えしていこうと思っています。

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