雑記帳
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153匹の魚

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「ステンドグラスの仕事をしていて、1番嬉しいときは何ですか?」と聞かれることがあります。
「そりゃあ、お金をもらうときでしょ」と最近は答えていますが、もちろんこれは半分冗談で(半分は本当)、真面目に答えるなら「取り付けのとき」と言います。

先週末、旭川へ取り付けに行ってきました。
場所は、「旭川友の家」の新築別館です。
「友の家」につきましては、昨年「江別友の家」の仕事をした時にブログにて紹介しましたので、そちらをご覧ください。

https://st-glass.jp/blog/note/9597.html

「旭川友の家」を運営するのは「旭川友の会」ですが、「全国友の会」が創立された1930年より古く、1929年に設立されています。会員はおよそ160名、家計や衣食住、子育てなど生活に関するあらゆることについて研究し学び合う活動を積極的に続けています。

別館に取り付けるステンドグラスについて相談したいという連絡をいただいたのは6月末頃、以下その後の仕事の流れです。

・7月 9日 設計を手がける山之内建築研究所(札幌)で打ち合わせ
・   11日 「旭川友の会」の方々が工房にお見えになる
詳しい要望を伺う
・   22日 現場の下見のため旭川へ
・8月16日 ABC3点のデザインを提出

旭川友の家 ステンドグラス原画

・   31日 デザインの詳しい説明のため旭川へ
見本のガラス等用いて説明
デザインはAに決定するが、会員の方々の新たな要望を取り入れ修整を加えることになる
・9月 4日 修整デザインA-2を提出

旭川友の家 ステンドグラス原画

複数の方々の要望を取り入れて修整したため、まとまりがなくなったとの感想が多かったらしい

・   12日 修整デザインA-2は取りやめ、元のデザインAに戻る
・   14日 ガラス等材料の発注
・   23日 現場にフィンランド製木枠サッシ窓が入る
(ヨーロッパからの船が到着せず、入荷が遅れたとのこと)
採寸のため現場へ
サッシの木枠幅が予想以上に広い事が判明し、デザインにさらに修整を加える必要が生じる
・   28日 修整デザインA-3提出

旭川友の家 ステンドグラス原画

・10月1日 A-3承認、制作開始
・   5日 到着したガラスの一部に不都合があり、別会社に再注文
・  28日 作品完成

ということで10月30日、現場へ作品を取り付けることができました。

旭川友の家 ステンドグラス取り付け旭川友の家 ステンドグラス取り付け

今回の現場は大変に快適に仕事をさせていただきました。
デザインの描き直しなどはよくあることで、これは全く苦になりません。
「友の会」会員の方々がステンドグラスの事を真剣に考え、取り付けの日を楽しみに待っていてくださったということが何より嬉しい事です。
取り付けのための準備を設計や施工の方々が的確にしておいてくれましたので、滞りなく1時間ほどで作業が終わりました。(取り付け時のトラブルは結構多いのです)
押し縁の最後の釘を打ち終え、作品を乾拭きしつつ感じる達成感と安堵感、わずか数秒の最も嬉しい瞬間です。

あ!そうそう、今回の作品のタイトルは「153匹の魚」でした。
これはヨハネの福音書の中に記されている話で、シモン・ペテロが投げた網に153匹の大きな魚が入っていたが、決して網が破れることはなかった、というものです。この話の教訓は、「主にしたがうことによって多くの人を集めることができる」ということのようです。
”153”という数字の意味については、アレキサンドリアの時代から様々な説が考え出されてきましたが、どれもいまひとつ説得力がありません。そこで僕がもうひとつの説を考えて、作品のタイトルとしました。
その説とは : 「旭川友の会」には153名の会員がいますが(だいたいそのくらいということにしておいてください)、主(羽仁もと子)の教えに導かれて集い、「友の会」という丈夫な網の中で活発に活動している魚たちのようだ、というものです。

少々こじつけがましい説ですが、デザインには秘められた物語が必要です。形と色に何かを語らせようとすることによって、デザインに豊かさと深さと謎が生まれるからです。

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