雑記帳

ピース!ー前編ー

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今月初め、長女の高校卒業式がありました。
僕は出席しませんでしたが、式の後教室などで長女が撮った写真を見せてもらうと、どの写真もすべて,女子も男子も先生までもがピースサインで写っています。卒業式だからというわけではありません。普段からそうなのです。

カメラを向けられたら反射的に”ピース!”とやってしまうその無意味な習慣をやめさせようと思って、一年ほど前に長女を説得したことがありました。僕の話はピースサインの歴史から始まって・・・

V-signピースサインにまつわる話でなんと言っても有名なのは、第二次大戦中、当時のイギリス首相ウィンストン・チャーチルが演説中に行ったもの。1945年の戦勝記念演説の際の写真が残っている。但しこれはピースサインではなく、「V-sign 」であって、Victory(勝利)を示している。

同じ動作がPeace(平和)の意味に変わったのは、それから15年後、ベトナム戦争以降のこと。アメリカの反戦運動とそれに呼応した日本の反戦運動においても、しきりにピースの言葉を使い、「ピース」と言いながら運動の勝利をアピールして二本指を立てる動作「V-sign」を繰り返したため、日本では「ピースサイン」と言われるようになった。これは日本だけの現象であり、西欧ではいまだに「V-sign」と呼ばれている。

それがさらに写真に撮られるときの決めポーズとなったのは、まだベトナム戦争の真っ最中、1972年のコニカカメラのCMがきっかけ。タレント井上順氏の出演で、「ハイ、チーズ」と言いながらシャッターボタンを押して、最後にピース!ピース!とやっていた(と思う)。

それ以来日本中で、写真を撮るときには必ず「チーズ」と言うようになり、長い間続いて定着していたが、いつの間にか「チーズ」がなくなって、「ピース」のポーズだけが残った。

二本指を立てて相手に示す動作はかなり古くから世界中に存在しているが、大抵は挑発や侮蔑の意味に使われるもので、むやみに使うと誤解を招くおそれがある。特に最近の中高生がやっている「裏ピース」、相手に手の甲を向ける動作が危ない。

・・・と、僕の長話をひととおり我慢して聞いていた長女は、「めんどくさっ!」と言い残して去っていきました。
なんという脳天気ぶり。信念がない。疑問を持たない。みんながやるから自分もやる・・。

皆がやってるから自分もやる、皆が持ってるから自分も欲しい、どうも日本人のメンタリティーには「皆が」という価値観が強過ぎるようで、それが外国からは奇異に見える数々の日本特有の現象を引き起こしているようです。

「国民性ジョーク」って知ってますか?主に西欧社会で広まっている笑い話の定番ですが、様々な国の国民性を比較してからかったり馬鹿にしたり、かつてはほとんどイギリス人、ドイツ人、イタリア人、フランス人など西洋人が出演者の中心でしたが、アフリカ人や中国人が出演することもあり、20年ほど前からは日本人の出番がやたら多くなりました。しかも大抵は最後の落ちに使われるというたいへん名誉ある地位を獲得しつつあります。

代表的なジョークをひとつ;
大海を航海中の豪華客船で火災が起きました。一刻を争う事態に、船長は様々な国の乗客を即座に海へ飛び込ませなければなりません。そこで船長は次のように言いました。
イギリス人には、「ここですぐに飛び込むのが紳士です」
ドイツ人には、「飛び込むのが規則です」
イタリア人には、「今飛び込むともてますよ」
フランス人には、「あなたには飛び込む自由と権利があります」
アメリカ人には、「今飛び込むのはヒーローだけです」
そして日本人には、「皆が飛び込んでます」

このジョークにはたくさんのバリエーションがあります。そのうちのひとつ;
大海を漂流する救命ボート。イギリス人とドイツ人とアメリカ人が1人ずつと日本人が3人乗っていましたが食料は3人分しか残っていません。
イギリス人が,「紳士たるものここで犠牲になろうではないか」と言って海に飛び込みました。
それを見ていたドイツ人が,「次に私が飛び込むべきであるのは明白な事実である」と言って飛び込みました。
アメリカ人は,「先を越されてしまったが、今からでもヒーローになれるだろう」と言って飛び込みました。
残った日本人3人は、言葉が理解できず何が起きているのかわかりませんでしたが、皆が次々と飛び込むので、3人で相談の上、一緒に飛び込みました。

とまあこんな調子で、国民性ジョークの最後に出てくる日本人はいつも、周囲の様子をうかがったり、皆で相談したり、会社に連絡して支持を仰いだりと自主性がないことこの上なく、日本人が国際社会でどのように見られているかということを如実に表しています。

以前はそういう日本人像を嫌って、少なくとも自分だけはそういう人間になるまいと強く思いましたが、困ったことに最近の僕は変ってしまいました。
世界中どこへ行ってもみんなでピース!、バッキンガム宮殿の前で、エッフェル塔の下で、ホワイトハウスの前でも万里の長城の上でも写真を撮りまくってピースとやってる脳天気な日本人が結構好きなのです。

ー後編に続くー

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