雑記帳

ガラスは絵の具

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ステンドグラスに使用されるガラスは、主にその製造方法によっていくつかの種類に分けられています。通常自然光の窓に設置するステンドグラス作品に使用されるのは「アンティークガラス」という種類のガラスで、名前のとおり1000年以上も前から続いている伝統的な宙吹きガラス技法で製造されています。かつてはヨーロッパの各地で製造されていましたが、今ではフランスとドイツのみ、しかも現在フランスの工場の存続が危ぶまれています。
ドイツとフランスの製品には、その材質や製造技術に明らかな違いがあります。僕はこれまでフランス製を好んで使用してきましたが、近年その製造量が減ったために手に入り難くなっていました。

 

ですがつい最近、すでに製造中止になったガラスを含めて希少なフランス製ガラスのある程度まとまった量を、運よく手に入れることができました。

 

荷物が到着したのは先週。

大きなダンボール箱が8個、工房の入り口付近を塞いでしまいました。

 

 

ダンボール箱から取り出したガラスの原板3枚を、入り口のガラス戸に立てかけてみました。

ガラスの原板の大きさは、ものによって違いますが、最大のタイプで900㎜×800㎜ほどです。

 

 

ステンドグラス制作者にとってのガラスは、画家の絵の具のようなものですが、絵の具と顕著に違うところは混色ができないということです。
ガラスの色は絵の具と同様、工場であらかじめ出来上がっており、ステンドグラス制作者はそれをそのままカットし、繋ぎ合わせて使用します。絵の具は混ぜ合わせることによって無限にと言っていいほど多様な色を”作り出す”ことができますが、アンティークガラスの色数といったらせいぜい数百色ほどしかなく、ガラスの色は”選ぶ”ことしかできません。

しかしそれだけでは表現の領域が非常に限られてしまうので、僕はエッチングや絵付けというガラス加工技法を多用しています。フランス製のガラスを好んで使うのは、ドイツ製のものより加工に適しているからです。

画家は、キャンヴァスや画用紙に絵の具を”塗る”ことによって絵を描きますが、ステンドグラス制作者はガラスを”カット”し”繋ぐ”ことによって絵を描きます。

このガラスを”カット”する作業によって、絵の具と の大きな違いがもうひとつ生じることになります。

ー続く

 

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