巷では、旭化成建材の手抜き工事偽装問題が大きな注目を集めていますね。昔から建築業界では「一番手を抜けるのは基礎工事」なんてことが言われてましたが、建物が出来上がってしまえば全く見えない部分ですから、それも当然でしょうか。しかし見えないからこそ手を抜かず誤魔化さず、きちんとした仕事をしようと心がけている業者だってたくさんいます。問題は、一般の方がその違いをどこで見分けるかということだと思います。
ステンドグラスの世界でも同じことが言えます。見かけは似ていても、その内実には大きな違いがある場合があります。それが主に強度や耐久性に関係してくることが多いので、この機会に説明しておこうと思います。
伝統的なステンドグラスは、ガラス片のつなぎに鉛の棒を用いています。
断面はH型をしており、その溝にガラス片を差し込んで組み立てます。
鉛は金属の中では最も柔らかく、ガラス片の形に合わせて自由に曲げることができます。その柔らかさがクッションの役目をして、ガラスを熱膨張や衝撃、加圧から守っています。
また鉛表面にできる錆は極度に進行が遅いため、鉄や銅などに比べると経年劣化の心配がありません。ほぼ100年は大丈夫と言われています。ちなみにヨーロッパの教会では100年に一度、ステンドグラスを新しい鉛棒で組みなおしています。
日本のステンドグラス業界では、鉛棒のことを鉛桟とか鉛線とか、色々な呼び方をしてきましたが、最近では”ケイム”という呼び方が一般的です。正しくは lead came(英語:レッド ケイム)ですが、lead は鉛、cameも鉛棒という意味ですので、単にケイムと呼ぶことが多くなりました。以下、鉛棒のことを”ケイム”と表記します。
ケイムが突き当たったところは、片方のケイムの頭をつぶして、もう片方のケイムの溝に差し込みます。
これをやらずに、ただ突き当たったままで組み立てると作業は楽ですが、強度に大きな差が出ます。
この組み立て方の違いは、次の作業”はんだ付け”の工程で、さらに大きな違いとなって現れます。
ー続く