今年の初めころ、蜜蠟作家の小中由紀子さんからお誘いがありまして、6月中旬の1週間、札幌のデパートで一緒に展示させていただくことになりました。その時、ステンドグラスはもちろん出品しますが、せっかく同じ場所で展示するのだから、なにか蜜蠟作品と関連するものがあったらいいな、ということで、ガラスのキャンドルトレーを作ることにしました。
意外に思われる方もいることと思いますが、僕の本業”建築用ステンドグラス”の仕事と、このガラス皿を作る仕事との間に共通点はほとんどありません。つまり、使う材料も技術も目的も異なる全く別の仕事なのです。強いて言うなら、ガラスを使うということと、それをカットするという技術、電気炉を使用するという共通点があります。しかしそこにはパン屋とうどん屋くらいの違いがあって、パン屋が使う麦粉とうどん屋が使う麦粉が違うように、使用するガラスは全く別種のものですし、何より出来上がった作品の味わい方が全く違うわけです。
ガラスの皿を作るのは初めてではありません。十数年前、注文があって相当数を作ったことがあります。パン屋にうどんの注文がきたようなものでしたが、そこで断らないのが僕のいいところです。(注:この評価には個人差があります)何故断らないのか?ということに関しては以前に一度書いていますのでそちらを是非ご覧ください。
→「面白い仕事ーその1-」
相当数作った皿の中で、最も高価なガラスを使用し、最も手間のかかったものが1枚売れ残っています。これまで幾多の展覧会の片隅を飾り、その都度「きれいですね」と言っていただくのですが、お買い求めいただくまでには至っていません。何度も出戻り年季が入って、今では女王のような風格さえ漂っているように思います。
そこで今回の皿作りは、この女王皿を中心にしてたくさんの小皿を繁殖させようという目論見を立てました。新しい子供たちは、小中さんの蜜蠟キャンドルを引き立てるのが役目です。
デパートでの展示会に先立って、札幌の「ギャラリーさいとう」にて展示することになりました。
毎年この時期開催される「トドまってはいけない展」です。14回目の今年は、様々な分野の23名が出展し、詩の朗読やギター演奏、ワークショップなど多彩な催しもあります。お時間のある方は、是非どうぞご来場ください。