神川県早川にオープンしたばかりのイタリア料理店「Elefante Giallo」の入口ドアに取り付けられる”ガラス絵”は、わずか15cm角の大きさですが、ステンドグラス絵付け技法のすべてを注ぎ込んだ作品になりそうです。
ではこれからその制作工程を、具体的に説明いたします。
と、しかしその前にひとつお見せしたいものがあります。前回のブログで、ステンドグラス用のオリジナル原画を僕から要求されるまでもなく作り上げた高梨君を誉めそやしましたが、その絵が彼の通常の作風といかに違うものであるかを説明していませんでした。これを見ていただけば一目瞭然、今回の仕事の原画が、明らかにステンドグラス専用のものであることが良く分かると思います。
日本の具象絵画の伝統を引き継ぎながら、彼なりの感性を強く打ち出しているという画風です。これをステンドグラスにしてくれと言われたら僕の常套句の出番ですが、そんなことにはなりませんでした。
さて話を戻しまして、制作工程の第一、使用するガラスの選択です。注文主である高梨君の原画の地色は、ほとんど灰色にも近い濃青色です。しかし彼はこの色に指定するつもりはなく、実際のガラスの色を見て選択しようという考えでした。そこで僕が提案したのが、ウルトラマリンに近い鮮やかな青色のガラスです。ガラスを透して、樹木や雲が見えているのが分かりますね。
このガラスは、サンゴバン社(フランス)で作られたアンティックガラスです。アンティックガラスは、その名の通り宙吹き(ちゅうぶき)という昔からの製作方法によりガラス職人が一枚一枚手造りで作ったものです。空中で作るために、抜群の透明感を持っています。その製作工程には、機械を利用できる部分がほとんどなく、したがって現代では最も希少で高価なガラスとなりました。
アンティックガラスの中でも、さらに手間のかかる特殊な作り方をしているのが”被せ(きせ)アンティックガラス”です。淡色の厚地ガラスの上に、濃色ガラスを薄く被せて作ることからそう呼ばれています。元々は、千年以上前に赤色のガラスを作るため考え出された方法ですが、次第に他の色の被せガラスも作られるようになりました。
今回僕が選択したのは、青色の被せガラスですが、なぜこのガラスでなければならなかったのか、ということを次回から説明していきます。
―続く