イスラエルとパレスチナの問題には強い関心がありますが、いくら勉強しても我々日本人には到底理解できない部分があります。
カン大学に通っていた頃、アフリカ人(アラブ人を含む)の友人が多く、いつも彼らのグループに混じって行動していました。しかし彼らを知れば知るほど逆に隔たりを強く感じるようになり、一時は人類の中でアフリカ人と日本人は対極に位置するのではないかとさえ思いました。
僕から彼らに質問して笑われることは多々ありましたが、逆に彼らからよく聞かされたのは、「日本人は魚を生で食べるんだって?本当かい?」 という質問。刺身や寿司や踊り食いの話をしてやると「ヒエーッ」という感じで大袈裟に驚いてくれるので、調子に乗って、糸を引くほど腐った豆に生の卵を混ぜて食べる話をすると、悶絶するほど大笑いするか、または凍りついて「嘘だろ?」という表情になりました。
今では、フランスでもアラブでもアフリカでも、寿司はすっかり定着して現地の人々も喜んで食べています。(納豆のおいしさを解ってもらうにはもう少し時間が必要なようです)それと同時に日本や日本人に対する理解も深まったことはまず間違いないでしょう。
生活習慣の違う相手を理解するために食事を共にするというのは、人類史のかなり初期の頃から実行されてきた方法ではないかと思います。料理を見て食材を知り、調理法を学び、実際に味わうことによって彼らの豊かさや倹約振り、辛抱強さ、大らかさ、繊細さと思いやりまでも感じ取ることができます。
そういう経験を少しでも分かち合いたいという願いを込めて、ボザール工房の新年会では、世界各国の料理を紹介することを恒例にしています。 今年は初夢にも出てきた「クスクス」をメインにしたアフリカ(アラブ)料理に決めました。学生時代に、学食で食べたり、友人にご馳走になったり、アフリカ料理店で味わったりした料理の数々を思い出しながら作ってみたいと思います。
予定しているメニューは下記の通り;
1.「クスクス」
細かい粒状のパスタに、肉や野菜を煮込んで作ったスープをかけて食べます。(江別トンデンファームのソーセージを使いました。一緒に映っているのは、グリ・ダマメットというチュニジア産のロゼワインです。ロゼには珍しく辛口でクスクスによく合います)
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2.「フムス」
豆で作るディップです。パンやクラッカーに塗って食べるオードブル。(ひよこ豆が足りなかったので、小豆とソラマメを使って作りました)
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3.「ムシカキ」
バーベキュー、というよりアフリカ風焼き鳥です。(鶏肉と牛肉。付け合せに長いものソテー)
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4.「ブリック」
アフリカ風揚げ餃子といったところでしょうか。(小さめに作りました。普通具の真ん中に入れる生卵は全体にからめました)
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5.「カチュンバリ」
肉とよく合う野菜サラダ。味付けはやはりアフリカン。(他に枝豆とコーンとひよこ豆のクリームサラダを作り一緒に盛り合わせましたが、写真を撮り忘れてあわてて撮ったらこの状態)
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6.「ミートボールとナスのトマト煮」
(クスクスが受けなかったときの代替品として作っておきました。北アフリカとギリシャ、トルコ、イタリアなどの定番メニューです)
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今月末の新年会が終わりましたら、そのとき実際に作った料理を写真にしてお見せします。
(クスクスはなかなか良い出来でしたが、皆の口に合うかどうか不安でした。幸い気に入ってもらえたようで、良かったです。かつてフランスの大学で机を並べた彼の国の友人たちの多くは卒業後祖国に戻ったはずですが、どんな人生を送ってきたことでしょうか。幸せだったわけがないし、現在生きているかどうかもわかりません。それに比べれば、僕たちの国の不景気なんてたいした問題じゃないと思えます。今年の新年会にアフリカ料理を選んだ理由のひとつは、オバマ氏のアメリカ大統領就任でした。自国の経済問題ばかりではなく、アフリカとアラブの問題を解決し平和をもたらしてくれることを期待します)