ガラスのカットは、人それぞれやり方があるでしょう。人によって身長も手の大きさも力の強さも違うのですから当然のことです。
しかしながら、パテの詰め方に関してはただ一つの方法、前回説明した方法しかないと思います。かなりの独断と思われそうですけれど、30年以上この仕事をやってきて、これに勝る方法を知らないし、何より理論的に正しいと思うのです。
現在日本で行われているパテづめ作業の主流は、通称”指づめ”と言われているやり方です。言葉通り粘土状のパテを指でケイムとガラスの隙間に押し込むようにつめる方法です。
しかしこの方法では、パテは入り口の部分にしか詰まりません。
長い間、指でパテをつめてきたという方に協力してもらい、実際に作業をしてもらった後パネルを分解してみましたら、この図の通りの状態でした。
最もパテを詰めなければならないのはこの部分(ピンク丸)ですが、粘土状のパテをそこまで届かせるのは難しいし、頑張って押し込んだとしてもガラスの断面の細かな起伏にまでは密着してくれません。
さらに問題なのは、実際に窓に設置した後です。
パネルは縦向きになりますから、パテが完全に乾燥してから後、剥離と落下を引き起こすことになります。隙間ができたパネルは自重によってしだいに歪みはじめ、ガラスに負荷がかかるようになり、弱いところから破損します。
そうなると早ければ半年、遅くとも50年以内にはパネル全体の歪みを引き起こし、はんだの割れやケイムの破断に至ります。
50年もつならいいじゃないかと言う向きもあるかと思いますが、ちゃんと作ったら100年もつのですから、その半分というのは問題だと思います。
事前にケイムの縁を丸めておき、液体状のパテを詰めるとこの図の通りに固化します。
これも実際にこの作業を施したパネルを分解して確認しました。
この方法でパテづめをしたパネルは、長い年月を経てもパテの剥離や落下はほとんどなく、衝撃や振動、自重による加圧にも耐えることができます。
ー続く