ステンドグラスの仕事を始めたばかりの頃は、自身の感性を色濃く表現する”アーティスト”を目指そうという気持ちもありましたが、1年も経たないうちに「それでは建築の世界でやっていけない」と悟りました。
ステンドグラスはそれ自身で自立できるものではなく、あくまで建築の従属物です。施主や設計士の感性に寄り添い、建築会社の都合に合わせ、インテリアコーディネーターの要望に応え、最近では資格取りたてのカラーコーディネーターの指示にも従わなければなりません。そんな仕事を30年以上も続けてきて身に付けたのは、カメレオンのごとく周囲の色に順応する技です。時折「あなたの作風は?」という質問を受けることがありますが、答えに窮してしまいます。「カメレオンの本当の色は?」と聞かれてるようなものだからです。
現在開催中の展覧会は、様々な種類の作品が雑多に展示されていますが、これが最も僕の作風を如実に表す姿だと言って良いかと思います。悪く言えば「まとまりがない」「一貫性がない」わけですが、良く言えば「多彩である」「柔軟性がある」とも言えるわけです。
そんな「まとまりがなく多彩な」作品群の一部をご紹介します。まずは、今回の展覧会直前に作った”おやすみランプ”。
この”おやすみランプ”という呼称は、業界特有のものらしく、巷では”ナイトランプ”とか”フットランプ”とか”常夜灯”と呼んでいるらしいです。
具体的な何かを表現しているわけではありません。
今の季節、まだ雪は残っているけれど、陽射しは暖かく春の予感がする、という空気感をイメージしています。
ガラスを電気炉の高熱で溶かし合わせて作っています。
陶芸と同じく、仕上がりは半分”火の神様”まかせです。
ー続く