雑記帳

原子力発電所とは・・・ーその4-

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日本政府が原子力発電所の建設を推進してきた主な理由は三つです。
一つはエネルギーの安定供給。
石油資源の枯渇や価格の高騰などに影響されないようにエネルギーの自給率を上げようというわけです。しかし燃料のウラン調達は100%外国に依存しており、それでエネルギーの自給率が上がることになるのでしょうか。
ウランはリサイクル可能であるから一度輸入してしまえば準国産エネルギーであるとしていますが、リサイクル率はまだ低く、また安全な再利用方法も確立していません。

二つめはコストが安いということ。
これは全くの虚偽と言ってよい理由です。
発電所の建設費や稼動後の運転費を加算して他の発電方法より安いとしていますが、そこには放射性廃棄物の処理費用や原発に寿命が来た時の解体費用は含まれておらずフェアな比較ではありません。
原発の建設費は大まかに言って3000億円くらいですが、解体費用はそれ以上にかかります。2002年に電気事業連合会が発表した長期試算によると、原発解体処理には30年かかるとして、一基当たり5320億円、2045年までに総額30兆円が必要としています。
また廃棄物の処分には現在地層処分が有力とされていますが、ガラスで固化した後の保管期間は数百年から10万年以上であり、その費用は見当もつかないほど膨大です。
地層処分は2028年から開始する予定ですが、まだ場所さえ決まっておらず、排出された核のゴミはたまっていく一方です。その保管費用もすでに相当の金額となっているはずです。

さらに、今回の福島原発のような”想定外”の事故に対する処理費用も当然”想定外”ですから、原発のコストには含まれていません。先日政府が発表したところによると、短期的な処理費用だけで数兆円かかるそうです。中期長期の処理費用に補償問題の経費も加えるとその数倍は必要になると思います。
これでもまだ原発のコストは安いなどと言えるでしょうか。

三つめは、クリーンなエネルギーであるということ。
近年電力会社がテレビで盛んに流しているのは、「原子力はCO2を排出しないクリーンなエネルギーです」というコマーシャルですが、温暖化防止の気運に便乗した悪質な過剰広告です。原発がCO2を全く排出しないわけではなく、またCO2より危険な放射性物質を常に排出しておきながらクリーンなわけもありません。
「嘘・大げさ・まぎらわしい」ということでJARO(日本広告審査機構)の審査対象になるのは確実なCMです。

チェルノブイリ事故の後、「次に大きな事故が起きるとしたらそれは日本だ」と予測した西欧の科学者がいました。日本の原発は優れているとか、管理が行き届いていると考えるのは日本人の幻想で、外国ではそうは見ていないようです。
原発の設計に関わったある日本人科学者の言葉が記憶に残っています。「原子力発電所とは、ハンドルの自由が利かずブレーキも満足に作動しない自動車を、時速100kmで何十年もの間走らせ続けようとしているような施設です。これで事故が起きないと考える方がどうかしている」

今回の福島原発の災害は、想定を超える規模の地震と津波が原因であるからといって、例外扱いにして良いというわけではありません。
これを機に、原子力の利用について、日本のみでなく世界があらためて考えるようになることを期待します。そうでなければ、今現在も避難させられている福島の人たちの苦労が報われないと思うのです。

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