昨年はどんな年だったかなと、元旦の朝にちょっとだけ昨年を振り返ってみました。
しかし思いつくのは、レッドキャビアの偽装にJR北海道の不祥事、都知事の5000万円疑惑等々、身近の情けない出来事ばかり。もっと世界的な出来事がなにかあっただろうと自分に無理強いしてやっと出てきたのは「オ・モ・テ・ナ・シ」くらい。どうも僕自身が卑小な人間になっていく気がした一年でした。
そんな中でも唯一スケールが大きく夢のある出来事がありました。と言っても僕が個人的にそう思うだけで、一般的な賛同は得られないかもしれませんが、それは”ヴォイジャー1号の太陽系圏離脱”です。
ヴォイジャー1号が打ち上げられたのは1977年、今から37年前のことでした。コンピュータと原子力電池を搭載し、当時の最先端科学技術を駆使して製作された観測機でした。しかしそのコンピュータのメモリーは69.63KBの容量しかなく、標準的なjpegファイルをひとつ保存できる程度、データの処理速度はスマホの7500分の1です。
データの記録方法には8トラックのテープレコーダーを使用しており、古いデータに上書きしなければ記録を続けることができません。データの送信速度は1秒間に160ビットですが、現在の地球上では低速のダイヤルアップ方式でも1秒間に20,000ビットを送信できます。
原子力電池を使用した送信機の出力は22,4ワット、小さな電球1個分であり、そこから発した信号が地球に到達するころには「1ワットの10億分の10億分の0.1」に減衰され、本来ならとうに行方不明になってるはずでしたが、地球側の受信技術が飛躍的に発達したために今でも交信を続けています。
現代から見れば、まるで小さな子供のようにひ弱なヴォイジャー1号ですが、それがはるかに期待を上回る成果を挙げつつ人工物としての最長到達距離記録を更新し続けています。それまでの道のりは決して平坦なものではなく、様々な苦難を地球上のスタッフと共に乗り越えながらの快挙です。
NASAがヴォイジャー1号の太陽系圏離脱を発表したのは昨年9月12日でしたが、実際には2012年8月25日に離脱しており、それを確認できたのが約1年後ということでした。
今後ヴォイジャー1号は、10年ほど後に人類との交信が完全に絶たれて孤独な旅に入ります。別の恒星系に到達するのは100数十万年後と言われています。そこで他の知的文明に接触することができるでしょうか?またそのころの地球は、そして人類はどうなっていることでしょうか?
ギリシャ神話に題材をとりながらも宇宙に対する夢を描いた僕のステンドグラス作品「夏の星座~アンドロメダ~」より ”ペガスス”です。
古代の壁画風に描くことで、気の遠くなるような時間の経過を表現しました。
作品の制作年は1990年の午(うま)年、それから24年、今年も当然午年です。
ヴォイジャー1号の如く、天駆ける馬の如く、スケールの大きな飛躍の年にしたいものですね。