さてTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の最終話ですが、華々しい戦闘やどんでん返しもなく、主人公碇シンジの独白のような心理描写が延々と続き、大きな盛り上がりもないまま終わってしまうというものでした。多くのファンが期待を裏切られたと感じたとしても、いたしかたない結末です。
しかしそれは視点の違いによるもので、この作品をロボットの戦闘アニメだと思ってはいけないでしょう。僕は「エヴァンゲリオン」は、人間の多様な形の”愛について”描いたものだと思います。そういう意味では、「ギャラクティカ」に確かに大きな影響を与えているかもしれません。
夫婦、親子、男女、友人・・・、あらゆる人間関係には愛がつきまとい、時と共に形を変えながら存続していく。最後にはすべての人間達が、人類愛とでも言うべき大きな愛の世界に呑み込まれ、混沌としたカオスに突入し、自分と他人の境界線さえあやふやになる・・・といった感じの終わり方です。
「2001年宇宙の旅」のラストにも似て、静かですが感動的なクライマックスだと僕は思います。それまでのストーリーがすべて集約され、謎を解き明かし、この作品にはコレしかないと思えるほど見事なラストです。
最終話のタイトルは、「世界の中心でアイを叫んだけもの」ですが、「おや!?」と思われる方もいることでしょう。そう、2003年にミリオンセラーとなった片山恭一氏の青春恋愛小説のタイトルにそっくりです。通称「セカチュウ」として一世を風靡した小説の正式なタイトルは「世界の中心で、愛をさけぶ」ですが、片山氏自身が付けたタイトルではなく、編集者が「エヴァンゲリオン」から着想したと言われています。
しかし、その「エヴァンゲリオン」の方もオリジナルというわけではなく、アメリカの小説家ハーラン・エリスンが1968年に発表した実験的SF小説のタイトル「The Beast that Shouted Love at the Heart of the World(世界の中心で愛を叫んだけもの)」から拝借したものです。
エリスンの小説は難解で、何故このタイトルが必要だったのか僕には理解できませんでした。むしろ「エヴァンゲリオン」の最終話こそこのタイトルにふさわしい内容のような気がします。
片山氏の小説にいたっては、売るための戦略と割り切った方が良さそうです。その戦略は見事に成功したわけですが。
先週は悲しいニュースがありました。
音楽家の加藤和彦氏が、自ら命を絶ちました。
加藤氏についてはここで説明するまでもありませんね。
彼は”愛について”のたくさんの曲を作りましたが、その中でも最も多くの人に唄われたのがこの曲でしょう。1970年、彼が24歳の時の作品です。作詞は北山修。
「あの素晴しい愛をもう一度」
http://www.youtube.com/watch?v=xb5jomIPj6M&feature=related
彼の遺書には、「この世は、音楽を必要としているのだろうか?」という内容の文章が書かれていたそうです。
僕たち”ものつくり”に携わる人間にとっては、重く辛い言葉です。