ちょっと制作に行き詰ったとき、窓から青空が見えるともうだめです。
「散歩にでも行ってくるかあ~」とカメラを肩に車に乗り込むことになります。
しかし今回は、車に乗るほどの距離ではありませんでした。工房裏手の千歳川の対岸を一時間ほどぶらついただけです。工房から歩いても5分で到着する場所です。
千歳川は支笏湖を源として延長108 km、江別市の正にこの場所で北海道最大の河川石狩川に飲み込まれ、その名前と共に消え失せています。
左が千歳川、右が石狩川です。
一見殺伐とした風景ですが、この季節には鴨や白鳥が羽を休め、時には海から風に乗って昇ってきたカモメを見ることもあります。
秋には数十万匹の鮭の大群が石狩川に押し寄せ、その一部が千歳川上流へと溯っていきます。
今朝は、本州から渡ってきたばかりのヒバリたちが「ピーチュルピーチュル」と賑やかにさえずっていました。
まもなくこの河原で巣を作り、雛を育て、雪が積もる前に家族そろって南へと去っていきます。
僕が20年かかって成し遂げる仕事を彼らは半年でやってのけます。
川を跨ぐ錆びついた鉄橋を、北へ向かう特急列車がけたたましい警笛を響かせながら走り去りました。
僕はその音に一瞬身をこわばらせましたが、鳥たちは全く動じません。
冬の間閉められていた野菜の直売所は明後日オープンということで、農家の人たちが次々と車を乗りつけ慌しく働いています。
「さあて、僕も工房に戻って仕事しなきゃ」と両手を持ち上げて伸びをしたら、澄み切った空に浮かぶいかにものどかな白い雲。
でもその下にはいつのまにか携帯電話の電波塔が立っていて、こんな場所でもつながるようになったことをアピールしているかのようでした。