雑記帳

春遠からじ?

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15年前、現在地に移転してきて以来、毎年12月になると工房にやってくるMさんという男性がいました。
Mさんは、新聞社を退職してから後も、同じ社の広告営業に回っているとのことでしたが、大きなガラガラ声で快活に話をされる人でした。
有料の広告なんぞどこにも出したことはない僕ですが、ついつい話しに引き込まれて、正月広告だけはお付き合いするようになり、それが13年間続きました。

Mさんは、工房の玄関から凍てつく道路に出る間際、毎年決まって同じ話をするのでした。
一語一句まで変わらず、顔の表情や身振り手振りまで同じだった気がします。
「年をとるとねえ、あんた、冬はきつい!でもねえ、きついきつい言うとったら余計長く感じますわ。だから私はね、もう3ヶ月したら暖かくなる、4ヶ月もしたら花が咲く、毎日一歩一歩春に近づいてる、と思うようにしとるんですわ。”冬来たりなば、春遠からじ”ですよ」

Mさんは、一昨年の12月には姿を見せませんでした。
先月もついに現れなかったので、意を決して新聞社に問い合わせてみました。
「あ~Mさん?元気ですよお、もうお年なので引退しましたあ」とのこと、ホッとしました。

                                                                                                                                
話は変わりますが、個人邸に取り付けた昨年最後の作品です。(部分)

ステンドグラス 春明るく穏やかな感じで、というご注文をいただきデザインしたら、どこか正月っぽいといいますか、春らしい感じになって、新年早々に見ていただくにはちょうど良い気がします。

ステンドグラス 年号 ��月
作品にはサインと共に年号を記していますが、この数字をどこまで更新することができるのか、これからは自己管理が大切だなと密かに気を引き締めています。

「冬来たりなば 春遠からじ」って、”厳しい冬の後には、暖かい春が必ずやってきますよ”なんていう希望的意味合いだけじゃなくて、”厳しい冬をしっかり過ごさないと、春はやってこないかもね?”という戒め的な意味も含まれているんじゃないでしょうか。

その証拠に英語の原文では、”If winter comes,can spring be far behind?” と、最後に”?”が符されています。

 

 

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