台湾の地震被害の様子が連日メディアで報道されています。そんな中で頻繁に目にするのは倒壊し多くの犠牲者を出したビルの様子ですが、20年前の建築時に手を抜いた事実が明るみに出ました。 建築においては”見えない所が大事”なのは周知のことですが、見えなければ誤魔化し易いというのも確かです。
ステンドグラスも同様、丈夫で長持ちする作品を作るには、見えない所にこそ手をかけてしっかりと作らなければならないのだけれど、そこが最も手を抜きやすい部分でもあります。
ここで紹介するのは、いずれもボザール教室生徒の作品です。
皆さん最初から手のかかる正当な技法しか習っていないので、手を抜く方法を知りません。
この作品は、教室カリキュラムの2作目です。
ステンドグラスパネルの強度を保ちつつ美しく組み立てるための複雑な技法を練習します。
教室カリキュラム5作目。
フランスのブールジュ大聖堂にある13世紀ステンドグラスの模写です。
すべてのガラス片に絵付けが施されています。
この画像はちょうど組みあがったところです。
見た目にすぐはわかりませんが、難しい組み立て部分が多く含まれています。
教室での”模写”とは、ただの複製作りではありません。模写をしながら、制作当時の技法と感性を探り、ステンドグラス表現技術の本質に迫ります。中世のヨーロッパ人がどれほどの情熱を持ってステンドグラスを作っていたのかということを身をもって知ることができます。そこには、手抜きや誤魔化しは一切存在しません。
カリキュラム6作目。
中央メダイヨンは、英国オックスフォードの教会にある絵付け作品の模写です。
周囲の幾何学模様は、中世から伝わるステンドグラスデザインパターンのひとつです。
伝統的な幾何学パターンは、淡い色調のアンティークガラスをランダムに配置するのが特徴です。
やはり強度を保つための組み立て方というのがあって、なかなか難しいのですが、この生徒は丁寧に美しく組み上げました。
これらの作品は、このあと半田付けをしてパテ詰めをすると、どうやって組み立てたかということはすっかり見えなくなってしまいます。つまり、高度な技術を施した作品も、手を抜いた作品も、完成してしまえばその違いを見分けることはできないわけです。倒壊した不良建築同様、壊れたときにしかその正体を見抜くことはできません。
(画像のステンドクラスはいずれも組み立て中で光を透さないため、ガラスの美しい色合いなどは全く見えていません)