雑記帳

賞を獲得するにはどうしたらよいのか?

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毎年7月の第2土曜日曜に開催されるのは「えべつやきもの市」です。先週も天気に恵まれ、ボザール工房の近辺は年に一度の大賑わいでした。しかし僕にとってやきもの市より大切なのは、全く同時期に開催される札幌平岡高等学校の学校祭です。学校祭のイベントとして”ステンドグラスコンクール”というのがありまして、毎年審査に呼んでいただいています。今年で9年目になります。

今年は美術の先生の計らいで、事前に学校に出向き講習会をやらせていただきました。ステンドグラス担当の50人ほどの生徒を前にして話した内容は、まずは本物のステンドグラスについてでした。ガラスや鉛、小さな完成品を見て触ってもらって、本物のステンドグラスとは何かということを知ってもらいます。しかし生徒たちが作るのは本物のステンドグラスではありません。本物ではないけれど偽物でもない、自然光が入る窓に設置するという条件だけが本物と共通した全く別種の作品制作です。だからこそ本物を知り、そこから離れて自由に材料を選び、自由な方法で創作することを示唆しました。模造品にならないためにです。

講習会の後半に話したのは「賞を獲得するにはどうしたらよいのか?」ということで、ここは大事なところです。「作品制作は、余計なことを考えずに理想に向かって打ち込むことが大切。賞をもらうかどうかは結果としてついてくることだから気にしないように」なんてことを僕は言いません。「コンクールに出品する以上、入賞を狙え!そういう競技なんだから」というのが僕の考えです。

で、僕が話したのは、入賞するための二つの道。

1.これまでに誰も見たことがないほど独創的なデザインの作品をつくること
2.デザインが独創的でないなら、誰にも負けない高度な技術でつくること

このどちらかを目指すのがコンクール入賞の秘訣だと思います。「もちろん両方同時に実現できたら満点だけどね」と言っておきました。ちょっと皮肉っぽい口調になったのは、「まあ、そんなことはまず無理だから1か2、どちらかを選んで頑張りましょう」という気持ちからだったと思います。

ところがところが!それから一ヵ月後、コンクールの審査の日、満点の作品が出てしまいました。審査には、制作技術・デザインの独創性・総合的印象の審査項目があり各10点、合計で30点が満点です。これまではどれかの項目に何か欠けるところがあって、満点が出ることはありませんでした。

 

これがその金賞を獲った作品。

3年8組の「infinity∞」(無限大)です。8と∞を掛けたのもちょっとしたアイデアでしたね。

抽象的デザインであることがまず珍しくて、注意を惹きました。

しかも抽象らしい自由さに溢れており、魅力的な色彩と形で構成されています。

近づいて見ると、細かな作業を丁寧に確実にこなしていることがわかります。手を抜いたと思われる部分がありません。

 

期限内にここまで仕上げるのは、リーダーの能力、そしてチームとしての能力も高かったことが容易に想像できます。そこも学校祭での金賞にふさわしいところです。

僕の講習会が少しは役に立ったのかどうかは定かではありませんが、その後の美術の先生の指導が良かったのでしょう、結果は嬉しい誤算でした。高校生をみくびってはいけない、という僕にとっての教訓にもなりました。

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