雑記帳

赤と金

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ガラスの世界で一般に金赤(きんあか)と呼ばれる色があります。
印刷業界などで呼称される金赤とは少し違います。
英語で言うとゴールドピンク、つまり赤というよりは桃色に近いのです。

ステンドグラス 金赤
こんな色です。
ドイツのランバーツというガラスメーカーの板を2枚重ねてみました。

印刷業界の金赤は、”ピッカピカの赤”といった意味合いで使っていますから、いわゆる赤なのですが、ガラスの金赤は、その発色を得るため実際に金を使用しているが故にそう呼ばれています。
ガラスには金赤ではない普通の赤色もありますが、こちらには金は使われていません。

宗教改革の嵐が吹き荒れた16世紀のヨーロッパ、教会の窓からステンドグラスが次々と外されていきました。新興勢力のプロテスタントが偶像崇拝を禁じたためでもありますが、かなり現実的な目的もありました。
目的は、ガラスの接合に使用されている鉛です。
当時最先端の武器であった火縄銃は鉛製の弾を使用していたのです。

ステンドグラスから鉛を取り出して溶融し大量の弾丸を作り出したわけですが、そのときに残ったガラスにも注目した時期がありました。
フランスで刊行されているステンドグラスの歴史書には、「兵士達は赤色のガラスのみを集めて大鍋で三日三晩煮詰めた」とあります。
そのころ”赤色ガラスには金が含まれている”というデマが広まったためですが、その結果は「鍋の底に銅の小さなかけらがひとつ残った」だけでした。
このデマのために相当数のステンドグラスが失われたとされています。

赤色と金色には、どこかに共通のイメージがあって、赤ガラスに金が含まれているという流言が容易に信じられる土台になったのではないでしょうか。
日本語の赤は”明るい”が語源であるという説があります。
金色の光り輝く明るさにも通じます。

赤と青 金と銀 ステンドグラス展

 

明るく元気が出そうな”赤と金”を主題にした展覧会を開きます。

金は本物の18金箔を使用しました。
同時に”青と銀”も主題にしていますが、本銀は黒く変色するため代わりにプラチナ箔を使用しました。

 

石戸谷 準 ステンドグラス展
「赤と青・金と銀」

5月15日~6月5日まで
東京神楽坂のアートサロン
”ようこそ わが家へ”にて

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