昨日、大きなダンボールいっぱいの新鮮な野菜が工房に届きました。
送ってくれたのは「面白い仕事ーその3-」でも紹介しました羊蹄グリーンビジネス(株)という会社を経営する本間さんです。本間さんは、「有機野菜とワインの融合」を目標に掲げて、3年前から精力的な活動を続けていますが、まずは有機野菜の生産が軌道に乗り始めたようです。
僕が初めて有機栽培に注目したのは1988年のことでした。有機野菜の宅配会社「らでぃっしゅぼーや」が創業し、その理念に賛同した僕は、すぐさま野菜や果物の宅配を頼みました。この年はまた、北海道電力泊原発1号機の燃料を初装荷した年でもあります。
その頃の僕は原発の反対運動に加わっていて、いたるところで原発推進論者相手に議論や口論を繰り広げていましたが、しばらく経ってひとつ気がついたことがありました。それは彼らが口を揃えたように「有機栽培なんて意味がない。無農薬は無理。今の人口を維持する食料を生産するには化学肥料と農薬の力に頼るしかない。それのどこが悪いんだ」と主張することでした。彼らの中には「日本は世界の工場となるべき。農地は必要ない。工場で稼いだ金で外国から食料を買えばいいんだから」という意見の者も少なからずいました。驚くべきは、農業関係の人々の多くが「有機栽培はうまくいかないよ。見栄えのしない高い野菜を誰が買うもんか。農業の現実を知らないやつのやることさ」と言っていたことです。
それから20年余り、原発推進は最悪の形で歯止めがかかり、すぐにつぶれると言われていた「らでぃっしゅぼうや」は、NTTやローソンと提携して年商220億円の大企業に成長しました。北海道の有機栽培農家は少しずつですが増え続け、今では「化学肥料や農薬なしで農業はできない」と断言する人はいなくなったように思います。
しかしそれでもなお有機栽培が大変なことに変わりはありません。”有機栽培”と”無農薬栽培”が混同されたり、無農薬栽培の野菜の方が良い、なんたって無農薬なんだからと誤解されたりということは今でも多いのですが、簡単に言ってしまうと、無農薬を含め一番厳しい条件をクリアしなければ認定されないのが”有機栽培”、”無農薬栽培”は少々基準が緩く、”低農薬”や”減農薬”にいたっては、指定する意味がないほどです。
有機栽培の根幹を成す理念は、”循環型で持続できるシステム”ということです。これは正にエネルギー問題で目指すべき理念と完全に一致しており、どちらも”安全性”に直結しています。有機栽培野菜は少々高価なものですが、これを買い求めることは食の”安全”を買うことであるのと同時に、そこで頑張っている農家を支え、循環型社会の構築に協力することでもあります。
興味のある方はこちらへ → 羊蹄オーガニックファーム
理屈はともかく、野菜は食べて美味しいということが一番です。今だから言えるけれど、20年前の有機野菜は見かけがよろしくないものもありました。でも有機栽培だから仕方がないと、味が良くないこともありましたが、安全なんだから我慢しようと、暗黙の了解でした。
ご覧の通り、輝くばかりの美しさ。
いくつかすぐに食してみましたが、味も最高です。
過酷な自然や周囲の無理解と戦ってきた先人たちと、その精神と技術を引き継いだ現在の農業者たちの輝かしい成果です。