雑記帳

時は虹色に輝くーその9-

2014年5月3日
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ガラスにビニールシートを貼り終わると、僕は気持ちを入れ替えます。
これまでは度々”作業”という言葉を使ってきましたが、これからすることに”作業”という 表現は似つかわしくありません。

またこれまでの”作業”はほとんど工房の2階でやっていましたが、シートを貼り終わった後は1階へ降りてきます。エッチング用の設備も電気炉も1階にあるので、その方が都合が良いのです。しかしそれだけが理由ではなく、全体を並べて見渡せる広さが欲しいからでもあります。できれば実際の設置場所と同様に、横一列に並べて見たいのですが、そこまでのスペースはありません。

土台はできました。油絵で言うなら、キャンヴァスを張ってイーゼルに立てたところです。
さてこれから何を描こうか?自分は何をしようとしていたのか?描くものはすでにほぼ決まっているわけですが、全体のイメージを再度 鮮明に呼び戻すまでは仕事に取り掛かることができません。

 

道具は二つだけ。

娘のお下がりのちびけた鉛筆と、これも娘がいたずらした穴あきの消しゴム。

長い間、道具に対するこだわりはないつもりでいましたが、違っていました。

これが僕のお気に入りの道具です。

 

 

座布団を乗せた脚立の上に座り、すぐに描けないのはわかっていますが、一応鉛筆を手にして全体を眺めます。午前11:00。

床に散らばったごみが気になって掃除。

天井の蛍光灯の一本がちかちかするので交換。

郵便受けに誰かが何かを乱暴に放り込んでいった。ピザ屋の宣伝ちらし。

帽子を被った上品そうな二人の婦人が「失礼します」と戸を開ける。近所で開かれる宗教の集会へのお誘い。丁重にお断りする。

2階でコーヒーを入れる。

1階に降りてコーヒーを一口すすったところに電話。「ケータイを乗り換えませんか」だと。

かすかに聞こえる救急車のサイレン。

子供たちが叫び合う声に混じって犬の吠え声。

「ゴトン」と向かいの自販機がペットボトルをはき出す重たい音。

 

すべての雑音を遠くに感じ始めたとき、実家に行っていた妻が車で到着。午後2時。
「昼ごはん食べた?」
昼食を忘れていました。でも家に戻ると遅くなるので、工房常備のカップラーメン ですませることにしました。

あわただしい昼食後、食後のコーヒーを手にして1階へ。

ガスの点検に付き合ってから、脚立の上の定位置に座る。

しばらくして再びすべての雑音が遠のいたころ、ケータイの着信音。
「今何してる?」と友人からのメール。午後3時半。

夜になるのを待つことにしよう・・・。

ー続く

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