雑記帳

一房の葡萄

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僕は小さい時に絵を描くことが好きでした・・・で始まるのは、有島武郎の童話「一房の葡萄」です。
主人公の”僕”は、級友ジムの持つ藍と洋紅の絵の具が羨ましくて、ついに盗んでしまいます。
それがばれて、若い女の先生のところへ連れて来られるのですが、その先生は”僕”を叱りもせずに窓辺から一房の葡萄を摘んで持たせてくれるのでした。
さらに次の日の朝、先生はもう一度一房の葡萄を摘むと、ふたつに切り分けて”僕”とジムとに分け与えてくれました。

あらすじだけを書くのはつまらないものですが、実際の有島武郎の文章は、正に匂うような気品に溢れています。
小学生の中頃、初めてこの作品に触れた時、先生の真白い手と紫色の葡萄、細長い銀色のはさみ、海の藍色、帆船の洋紅色・・・いくつかの色と形の対比が心の奥底まで鮮烈に入り込んで、目眩がするような気がしたのを思い出します。

とはいうものの、藍色はわかりましたが、洋紅(ようべに)という色がどんなものなのかその頃は知りませんでした。
洋紅とはコチニールレッド(cochineal red)のことで、コチニールという南米のカイガラムシの血を原料にしてつくる赤色のことだそうです。
ワインレッドに近い色です。

ステンドグラス ぶどう

 

我が家の庭には葡萄棚がありまして、秋になったらそこに実った葡萄の房をモデルにして作品を作ろうと決めていたのですが、どういうわけか今年の秋は一粒の葡萄も実らず、絵のモデルにすることはできませんでした。
仕方がないからいくつかの写真を参考にして、有島武郎の童話のイメージを思い返しながら、藍色と紅色で作品を作ってみました。

 

 

 

 

ステンドグラス ぶどう

 

最後の作品が仕上がる頃に、鈴木章氏ノーベル賞受賞のニュース。
有島武郎は札幌農学校の出身、北海道大学出身の鈴木さんは後輩にあたるわけだ、しかも僕の住む江別市にお住まいとか、なにやらタイムリーな出来事に心躍らせつつ明日から展覧会が始まります。

展覧会のタイトルは「ブドウ・ぶどう・葡萄」。
色々な種類の葡萄を気ままに描いてみました。

 日程と場所は以下の通り;
 

① ウッドいのうえ http://www5b.biglobe.ne.jp/~winoue/menuf/menu00.html
    10月12日(火)~21日(木) 10:00~18:00

② GALLERY 村岡 http://www6.ncv.ne.jp/~gmuraoka/
    10月25日(月)~11月13日(土) 10:00~18:00

 

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