雑記帳

もう一つの地球が見つかる日ーその1-

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つい昨晩読み終わった本は、「もう一つの地球が見つかる日」というタイトルでした。
”系外惑星探査の最前線”という副題が付いており、内容は正に副題通りの天文学の話ですが、ステンドグラスを作っている人間にも関係ありそうな事柄が3点ほどありましたので、ご紹介したいと思います。著者はトロント大学教授で、自身が惑星探査の最前線で活躍するレイ・ジャヤワルダナ氏です。

太陽光が屈折すると7色のスペクトルが生まれるのは、ガラス業界ならずとも広く知られているところです。しかしこのスペクトルを仔細に観察すると、ところどころに暗い線が入っているということはご存知でしょうか?この現象が発見されたのは1802年のことですが、それがどれほど重要な事実かということに気がついたのは、ドイツのガラス職人ヨーゼフ・フォン・フラウンホーファーでした。

フラウンホーファーは飛び切りに腕が良く、世界でも屈指の光学装置製造職人となり、自ら発明した実験装置「回析格子」でスペクトルを分析し、何百本もの暗線を記録しました。このガラス製実験装置には、ダイヤモンドで無数の溝が削り出されてましたが、その間隔はわずか0.003㎜でした。

しかし彼の偉大さは職人としての腕だけではなく、むしろその後のひらめきにあったと言ってよいでしょう。彼は実験室で様々な物質を燃やして、物質ごとに暗線の出方が違うことを発見しました。さらにそれが夜空の星のスペクトルに共通するものがあることにも着目しました。つまりそれは、地球や太陽を含む我々の身の回りの物質と、遠く離れた星々が同じ物質でできていることを最初に示した実験だったのです。

フラウンホーファーは1826年、39歳の若さで世を去っていますが、ガラスを溶かす炉のそばで金属の蒸気を吸い続けたせいだろうと言われています。彼の業績は、スペクトル中の暗線を”フラウンホーファー線”と名付けることで残されています。”フラウンホーファー線”が元素特有の指紋のようなものだという事実を解明したのは彼の死後30年経ってから、さらにその仕組みまでを明らかにできたのは20世紀に入って量子論や量子力学が誕生してからのこと、だそうです。

次はスペクトルとフッ化水素の話です。

ー続く

 

 

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