大きなパーツで一番最後に残ったのは”空”の部分です。
原画段階では抽象表現にする考えでしたが、具象寄りの表現にすることに変更しました。
まずは雲の明暗を分解して平面構成をします。
時は夕刻、沈みかかった太陽の最後の光が、雲の縁を眩しく輝かせています。
空の色は深まり、すでに最初の星が瞬きはじめた瞬間です。
イラスト的な表現ですが、ある程度のリアリティーを感じられるようにしたいと思いました。
リアリティーという観点から見ると、何かが欠けています。
雲の量感、空の奥行き、つまり空気感がないのです。
筆に薬品を付けて、絵を描くように腐食します。
雲は小さな水滴の集まり・・・
大気は上に行くほど薄く冷たい。
さらにその上は、漆黒の宇宙に広がる銀河・・・。
空は不思議です。
子供のころのある日見た空が、いつまでも記憶に残って消えません。そのときの空腹感や通りに立ち込める魚の焼ける臭い、砂利道のゴム底に当る感触まで、似たような空を見たとき鮮明に蘇ります。
僕の記憶の中にあるそんな空を描いてみましたが、多くの方に共通する記憶ではないかと思います。
ー続く