今年も行ってまいりました。札幌平岡高校学校祭におけるクラス別ステンドグラスコンテストの審査です。
僕と美術の先生、それともう一人別の先生の三人が、いくつかの観点から作品に点数を付けて、金銀銅の三賞と特別賞を決めます。通常は合計点数の高いものからほぼ自動的に賞が決まるのですが、今年は迷いました。というのも、少なくとも僕に関しては上位三クラスが同じ点数だったからです。
同じ点数だから引き分けにして三クラスとも金賞にしよう、というのは良くありません。芸術の本分は競争することではないけれど、負けたり否定されたりすることによって大きな力が生まれることがあるのは美術史が証明しています。自分より優れた他者の存在を見せつけられて意気消沈する者もいれば、逆に命の炎を燃え上がらせる者もいます。つまり”金賞”は誰よりも優れた力を称えるものでありますが、”銀賞””銅賞”には新しい力を喚起するという役目があると思うのです。
さてそれで、今年の金賞は、さんざん迷った末に3年4組の作品「海の底から」になりました。
デザインも制作技術も、かなり完成度が高い作品です。
表現のスタイルが出来上がってる感じがします。
銀賞は、3年3組の「Who is Wolf ?」でした。
丁寧に作っていますが、形や色彩はさほど洗練されていません。
しかしそれが、躍動感や若々しさを感じさせる要因にもなっていると思います。
銅賞は、1年5組の「光」です。
まず題材が新鮮でした。
これまでに見たことがないデザインです。
加えて水の描き方が秀逸でした。
僕はこの3点に同じ点数を付けました。
それでは何が勝敗を分けたのかというと、それは”作品の輝き”です。”輝き”は3つの作品すべてにありますが、しかしその種類が違うのです。
「海の底から」 は、高度なセンスで全体が統一されて淡く均一に輝いている感じがしますが、「Who is Wolf ?」 は、どこかぎくしゃくとしながらもある一点が強烈に輝いている気がします。「光」は、スケールの大きさが隠されているかもしれないという可能性と、次回作への期待を感じさせてくれる輝きです。
迷いました。総合的な完成度か?粗削りの強さか?将来性か?他の審査員の意見も交えて、結果は上記の通り。かなりの接戦でした。
僕が一人で勝手に決める特別賞は、3年7組の「LOOK INTO」です。
この作品も、金銀銅賞の作品に劣らず輝いていて、是非とも拾い上げたいと思いました。
例年特別賞はアイデアを重視しており、技術的なことはあまり気にしないようにしていますが、この作品は技術も伴っています。
知人のデザイナーに、この審査の話をしたら、「真剣だね」と笑われました。もちろん真剣です。「高校の文化祭ごときで」などと思うなかれ、どこぞのエンブレムデザインコンペなどよりよほど公正に競っているのだから、審査する方も真剣でなければなりません。