昨年12月に注文いただいた仕事、注文主は、ボザール工房と同じ江別市内に住まわれるSさんご夫妻です。
Sさんの家は築十数年で、2世帯仕様の大きな建物です。設置希望場所は階段の踊り場、北西向きの縦長嵌め殺し窓です。窓の向こうには学生寮の建物が見えますが、少し離れているので、空の広がりを十分に感じられます。ステンドグラスには、うってつけの場所です。奥様とデザインの打ち合わせをしながら、僕はすでに頭の中に図柄を想い描いていました。
僕の脳裏に浮かんだのは、子供のころ遊んだ近所の野原。田んぼと小川の間にある細長い畦道のような野原でしたが、そこに寝転がって空を眺めるのが好きでした。伸び放題の草のせいで視界の両側が塞がれ、空が縦長に切り取られて見えました。
題材を「水と地と空」に決めて、抽象的な絵を描き提案しましたら、すぐに了承いただきました。これまでにも何度か扱っている題材です。しかし、今回もやってみたかったのです。Sさんご夫妻は僕とほぼ同年代、子供のころに浸ったあの空気感を共有できるような気がしました。
僕の過去の作品に使用したデザインスタイルをベースにして、過去にはなかった新しい部分を加味することにしました。
昨年の内に、ガラスカットとエッチングを終えました。
エッチングしたピースは4枚、こんな感じです。
それを新年に入ってから組み立てて、めでたく11日に取り付けとなりました。
階段の下から見上げるステンドグラスは、全面空がバックになるので、スッキリとして見えます。
背面のサッシ縁幅が50㎜あり、それを乳白系のガラスで隠しました。
図柄的には、あまりひねりを効かすようなことはせず、シンプルに素直に作りました。
下部が”水”、中ほどが”地(植物)”、上部が”空”をイメージしています。
抽象的なデザインですが、具体的な事物からインスピレーションを得ているので、半具象と言ってもよいデザインです。
2016年最後の仕事になるはずでしたが、2017年最初の仕事になりました。
ちなみにSさんご夫妻は、今年が結婚40周年だそうで、「2017年のサインは、記念になってちょうど良かった」と言っていただきました。