大震災の直後、現地の悲惨な状況と共にメディアが盛んに流していたメッセージがあります。
まず、「被災地へ駆けつけるのはおやめください」といった内容で、次に「支援物資を個別に直接送るのはお控えください」、さらに「物よりも現金が一番役立ちます。寄付しましょう」といったものでした。
どれも間違いとは言えませんが、本当にそれで良かったのだろうかという疑問も残ります。
被災地の周りの”関所”で食料など支援物資が止められて現地に届かなかったり、義援金がなかなか有効に使われなかったりしたことに日本中がイラついていた時期もありました。
結果的に見て、ある程度自由にやらせてもらった方が良かったのではないかという気がします。
実際に、メディアのメッセージなど無視して、重たい荷物を担ぎ、あるいはトラックに積めるだけ積んで、現地へ乗り込んだ人たちも大勢いたようです。
この人たちの一部は、メディアが危惧したように現地で”足手まとい”になった可能性はあります。
”軽はずみ”と批判されてもいたしかたない行動だったのかもしれませんが、しかしその心を批判してはならないと思います。
政府の支援が滞る中、リュックいっぱいに詰め込んで届けてくれた食料でどれほど多くの人が助かったことでしょう。
それはただ単に飢えを凌いだということだけではなくて、危険を顧みず助けに来てくれた人の心を受け止め、その後の生きる活力にに変わっているはずだと思うのです。
仙台藤崎、わたせせいぞうさんとの展覧会には、~ハートを贈ろう、ニッポン!!~という副題が付いていました。
展覧会場では、被災で傷を負ったらしい人の姿も多く見かけましたが、体だけではなく心の傷を負った人も多いのではないでしょうか。
体の傷が治りかけているように、心も自然に癒されて「よし頑張ろう!」と思えるなら良いのですが、中には絶望と無気力の縁をさ迷っている人もいるはずです。
そういう人たちに何かを贈りたかった、何も渡せるものがなかったとしても、とにかく現地に駆けつけたという気持ちだけでも受け取ってもらえたら、という展覧会でした。