川風便り

懐かしき庭-その3-

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ガラスを切り終わって全体を並べる。
ガラスの色は、紙の上に置いた状態と、光にかざして見た状態とでは全く違って見える。特に紫色のガラスなどは、光を透さないと黒色にしか見えない。緑色のガラスも、かなり濃いめに見えてしまう。
そのことを念頭に置いて、これから始める絵付け作業は、自然光が射し込む窓に飾った時にどう見えるかを常に意識しながら進めることになる。

減筆

絵を描くことを、一般に”加筆”という。油絵とか水彩画とか、真白い紙に絵の具をのせればのせるほど、絵は暗くなる。ステンドグラスの絵付けも同様で、ガラス面に絵の具で加筆し焼き付ける作業を繰り返す度、ガラスを透過するはずの光を遮断し、ステンドグラスは暗くなっていく。
しかしステンドグラスには、加筆とは全く逆の効果をもたらす”減筆”という技法がある。これは広い美術の世界でもステンドグラス界にのみ存在する技法であり、描けば描くほどガラスを透過する光の量が増えて、ステンドグラスはより明るくなるのだ。

但し、減筆技法を使用できるのは、”被せ(きせ)ガラス”に対してだけだ。被せガラスとは、その名の通り、土台となる無色のガラスの上に色ガラスの薄い層を”被せ”てある特殊なガラスだ。
「19世紀英国スタイルパネル」においては、紫色のガラスが被せガラスであり、これから減筆加工することになる。

実を言うと”減筆”という呼称は一般的ではなく、通常は”エッチング”という言葉を使っている。より正確に言うなら”フッ化水素酸液によるガラスエッチング”ということになる。
この技法についてより詳しく知りたい方は過去のブログを参照して欲しい。
「エッチング事始めーその1-」から「ーその6-」まで

エッチング準備

エッチング(etching)とは、酸で金属板などを腐食して絵を描く技法の総称だが、通常は銅版画の技法として知られている。しかしガラスのエッチングとの共通点はほとんどない。

まずエッチングするガラス、この場合は紫色の花弁部分のガラスだが、そのおもて面に塩化ビニール製の白色粘着シートを貼る。裏面にも保護用に透明シートを貼る。
このシート貼りには、強酸液中での長時間作業に耐えさせるために守らなければならない注意点や、ちょっとしたコツがあるのだが、説明が長くなるし、つまらないだろうから省略する。

紫色のガラスにシートを貼り終わった状態。

酸で腐食する部分のシートを切り抜いた状態。


ガラス面に貼ったシートが実用粘着強度に達するまで数日間待たなければならない。その前にエッチング作業に入ったら、作業中にシートが剥がれてきて作業は失敗、もう一度ガラスカットからやり直すことになってしまう。
作業工程として、本来ならエッチングの準備より先にやらなければならない作業が他にあるのだが、待ち時間を無駄にしないためにシート貼りを優先させた。
この次は工程を元に戻して”絵付け準備”からのスタートになる。

―続く

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