雑記帳

原子力発電所とは・・・-その2-

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福島原発の放射能漏れ報道を見ていて気になるのは、”基準値”と”ただちに”という言葉です。
”基準値を超える放射能が検出されたが、ただちに健康に被害があるわけではない”という具合です。
放射能の害というのは、10年20年経って、あるいは子や孫の代になって現れるという性質のものですから、”ただちに”結果が現れないのは当たり前です。
気休めにもならないのですが、東電や役人、専門家と称する人たちがこぞってこの表現を使い、”冷静に対処して”と言っています。

そもそも”基準値”というのは、どのようにして決められたものでしょうか。
結論を言ってしまえば、まあこんなものだろう、このくらいにしておこうと誰かが適当に決めたものです。特に根拠があるわけではありません。
然るべき理由がないので、国によって、時代によって、状況によって様々に変化しています。
国際的な基準値というのもありますが、これも同様です。
かつては安全レベルとか、許容値という言い方もしていましたが、事実にそぐわないのでやめにしたようです。

原発事故の際に、現場で作業員が浴びる放射線の基準値は以前から決められていましたが、今回福島原発でその数値を適用すると作業ができないため、基準値を2倍に引き上げて作業ができるようにしました。
「えっ!そんなことしていいの?」と思われる方は多いと思いますが、していいのです。
なぜなら元々の数値に根拠がなく、適当に決めておいただけなので、必要に応じて変えても構わないわけです。

1986年のチェルノブイリ原発事故の際、世界中に放射性物質がばら撒かれ、小麦粉や牛乳を初めとして、その加工品などあらゆる食品から基準値を超える数値が検出されました。日本の税関でも多くの食品が放射線検査で引っ掛かり輸入禁止となりましたが、このとき日本政府はどうしたか?
それまでの基準値を引き上げて輸入できるようにしました。
我々はすでに放射性物質入り食品を多量に口にしています。

余談ですけど、そのときの担当役人のコメントが振るってましたね。
曰く、「このままでは輸入商社が潰れてしまうので」だって。
せめて「国民の食糧確保のため」くらいは言ってほしかったな。

話を戻しますが、放射線や放射能に安全値というのはありません。
理論的には、一粒の放射性物質が原因で、ガンになったり遺伝子を傷つけられたりということがあり得ます。
”基準値以下だから安全”という専門家のコメントを何度も耳にしましたが、誤解の元になる表現です。
東京ドームの真ん中にいて、一本の槍に運悪く当たってしまうこともあり得るわけですが、そんなことはまずないだろうという楽観的予測で”安全”と言っています。
”半減期”という言葉もよく聴かれますが、槍の数が半分になってより当たりづらくなったという意味です。半分になったらもう安全ですというのは間違いです。
本当の安全とは、槍が遠くまで届かないとか、槍を投げる観客がいなくなったとかいう場合に限り言ってよいことだ思います。

先日あった(現在も続行中)東京都の水道水に放射性物質が検出された件は、”基準値以下になったから安全”というわけではありません。
槍を投げる危険な観客は数人、しかしグラウンドには一千万の人が無防備でひしめいており、放置すれば誰かに槍が当たることは必至です。

ー続くー

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