今年になってから新しくなった僕の車には、最初からカーナビゲーションシステムが装備されていました。これまでカーナビは必要ないと思っていましたからほとんど使用経験もないのですが、先日道に迷った時ちょっと使ってみたら、 これがなかなか便利で重宝しました。
何がいいかというと、道路だけでなく建物までを表示した地図が見られるということと、進むべき道を音声で案内してくれるところでしょうね。とにかくナビの指示する通りに右に曲がったり左に曲がったり、何も考えずに目的地に到着することができます。時に遠回りの道を指示する場合もあるようですが、迷って走り回るよりはいいでしょう。
カーナビというのは、要するにしゃべる地図だということがわかりました。
先日、Eテレのスーパープレゼンテーションをたまたま見ていましたら、その日は番組ナビゲーターの伊藤穣一氏本人のプレゼンでした。
正しく賢明に”今を生きる”にはどうしたらよいか、という内容でしたが、伊藤氏が述べたいくつかの主張の中で、最も心に響いたのは「地図より羅針盤を持て」という言葉です。
伊藤氏のプレゼンによりますと、現在知っている情報だけで将来のことを事細かに計画し実行しようとするのは間違いである。刻々と変わっていく現在を生きるためには、大まかな方向性だけを決めておいて、あとはその場の状況に合わせて対処していくという柔軟性を持つべきである。過去にとらわれるでもなく、未来を決めつけることもなく、今を見つめる”ナウイズム(現在主義)”を提唱したい、ということのようでした。
今月の12日と26日は統一地方選挙の投票日です。北海道知事選では、これまで3期12年を勤め上げた現職高橋はるみ氏と新人の佐藤のりゆき氏の一騎打ちですが、その主張や周囲の評価を見ていると、正に”地図派”と”羅針盤派”にはっきりと分かれているようです。
”地図派”は当然高橋氏を支持し、その実績や中央との太いパイプを強調、何より今後の具体的な計画案を重視しているようです。対する佐藤氏を支持するのは”羅針盤派”で、北海道の進むべき道を指し示し新しい政治を実現することに重点を置いています。
”進歩派”を自認してきた僕の立場から言わせてもらえば、実績や前例にこだわりすぎる姿勢からは新しいものが生まれません。阿倍政権との太いパイプなど、むしろ断ち切りたいくらいです。具体的な計画案については、経験が視野を狭くして北海道の現実が見えてないんじゃないかという気がする内容です。
例えば泊の原子力発電所についてですが、高橋氏は原発容認あるいは推進派であり、佐藤氏は廃炉を主張しています。このことについて ”地図派”の人々は佐藤氏に対して批判的であり、”夢を見ているだけで具体性がない”と言います。これは羅針盤に対して、”方向を指し示しているだけじゃないか、道筋が示されていない”と批判しているようなものです。地図が無意味とは言いません。しかし政治を行う者は、その場がたとえ地方の小さな自治体であっても、世界を視野に入れて国を考えることから始めるべきだと僕は思います。大きなヴィジョンを正しく描くことによって、地域の地図は自然に出来上がっていきます。
カーナビは確かに便利だけれど、使い過ぎると指示を待って言いなりに行動するだけの思考停止人間になりそうです。車の運転だけならそれもいいでしょうが、世の中全体に思考停止人間を増やすような政治はそろそろやめにしてほしいと願っています。