雑記帳

手に入り難いものが欲しいーその1-

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僕のデザインテーブルの上には、常に菓子類が並べられています。煎餅やかりんとう、ピーナッツにクラッカー、何でもありですが、欠かせないのはチョコレートです。頭を使う仕事の時には、何かを食べながらの方が作業が捗る気がして、特にチョコレートの効き目が強いような気がするのです。

チョコレートの銘柄はだいたい決まっており、冬場に並べるのはロッテの「ラミー」と「バッカス」が定番です。このふたつの製品は、それぞれラム酒とコニャックを使用しているからなんでしょうか、”冬期限定”発売です。といいながらも北海道地区は、毎年まだ秋口の9月末、全国で一番早く発売を開始しますが、その時期に僕はまだ買いません。やはり何となく冬のイメージがあるし、第一”冬季限定”と明記されてるし、だから僕は雪が降るのを待ってから買いに行くことにしています。

そんなわけで昨年は11月末にスーパーのチョコレート売り場へ出かけましたところ、ちょっとした驚きがありました。お馴染みの、赤いパッケージの「ラミー」、緑のパッケージの「バッカス」と並んで黄色のパッケージがあるではありませんか。手にとって見ると赤いりんごの絵と「カルヴァドス(Calvados)」の文字が!

 

50年前から続いている洋酒チョコレートコンビに新入りが加わってトリオになるとは!

しかもそれが「カルヴァドス」って、かなりマニアックな気がします。

よほどの酒好きの人でなければ、カルヴァドスを飲んだ経験もなく、名前すら聞いたことがないんじゃないかと思います。

 

さほど酒に詳しくもない僕がそれを知っているのは、たまたまその産地に住んでいたことがあるからです。
僕が若き日の一年間を過ごしたのは、フランスのノルマンディー地方カルヴァドス県の首都カン(Caen)でした。カンは県庁所在地とはいえ、人口12万くらいの小都市です。歴史ある古い町並みは第二次大戦でことごとく破壊され、中心部の城跡だけがかろうじて残されました。現在、修道院や大聖堂など中世スタイルの建築物が街中に多数見られますが、すべて戦後に再建されたものです。

さてその城跡の真ん中を通り抜けた向こうには僕の通った大学があり、城壁内には美術大学がありました。そうなると当然この城跡の中も外も学生たちのたまり場になるわけでして、真夏の夜にはあちらこちらカップルだらけ、その他グループでたむろして飲んだり歌ったり、そこでボトルのまま回し飲みされていたのがカルヴァドスでした。
初めてこの酒を飲んだときの感動は忘れられません。りんご酒を蒸留した安い酒だって聞いていたのに、芳醇な香りと深い味わい、癖は強いけれど酔い心地は良く、すっかりほれ込んでしまいました。そのあとカンにいた間はもちろん、翌年パリに出てからも愛飲していました。

帰国後は、手に入り難いのと、あっても日本では高価なため、カルヴァドスを口にすることはまずありませんでした。それがチョコレートで気軽に味わえるとはなんという幸せ、「ロッテさんありがとう。売れなくても作り続けてね」と願いながらカルヴァドスチョコの一粒を口へ、あの懐かしい香りと味が口中に広がる・・・・・、はずでしたが「あれっ!?」

ー続く

 

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