第13日目(10月30日) :
パリから電車で1時間ほど南に下ったところにある町シャルトルを訪ねました。
シャルトルは「フランスの穀倉」と呼ばれるボーズ平野の中心に位置する古都ですが、電車の窓一面に広がる麦畑の向こうに大聖堂の高い尖塔が見えると駅が近づいています。
駅からまっすぐタクシーで向かったのは、シャルトル郊外に居を構えるロワールさんのアトリエ。
アトリエ ロワールは、ガブリエル・ロワール氏によって、第二次世界大戦終結の直後1946年に創設されました。古典的な絵付けのステンドグラスも、いち早く取り入れたダル・ド・ヴェール(厚板ガラス)も、その印象的なデザインが受け入れられて、彼の作品は世界中に広まっています。
日本でも1975年、高さ18メートルの塔「幸せをよぶシンフォニー彫刻」が箱根彫刻の森美術館に設置されました。
1996年にガブリエルさんが亡くなられてから、息子さんのジャックさんが後を継ぎ、現在はお孫さんのエルヴェとブリュノ兄弟が切り盛りしています。
ロワール一家とは30数年来のお付き合い。
アトリエ訪問も何度目かになりますが、いつ見ても立派です。
広大な敷地に建物が点在し、まるでひとつの村のようです。
屋外のいたるところにステンドグラスが展示されています。
台風や積雪がないからできるのですね。
敷地内を流れる川には船着場もあります。
エルヴェさんに案内されて通り抜けるアトリエは、様々な用途の大きな部屋が連続しており、迷いそうな広さです。
奥では、パテ詰めの作業をしていました。
エルヴェさんの話によると、フランス国内に250ほどあったステンドグラス工房が今は150ほどに減っており、10人以上の従業員を抱える工房となると、ロワール工房を含めて五つぐらいしか残ってないとのことです。
ガラスの見本室に入ったとき、近頃はガラスも必要な量がすぐに揃わず苦労していると言ってました。
このあたりの事情は日本と変わりませんが、アトリエの様子を見ている限り、幾つもの大きな仕事が同時に進行していて大変に忙しそうです。
大型の焼成炉など新しい設備も増えており、「活気がありますね」と言うと、「今、アトリエの仕組みを再編成し、仕事のやり方を変え始めたところです。世の中が変わっていくなら、我々も変わらなければなりません。新しい需要を生み出すための設備投資も必要です」とのこと。
ロワールさんほどの世界的な大工房でさえ、生き抜くために工夫し、努力し、挑戦しようとしています。僕なんぞが苦労するのは当たり前だなと、安心もし励まされた気持ちにもなりました。
エルヴェさんと記念撮影。
僕が最初にロワール工房を訪ねたとき、エルヴェさんが”ルノー・サンク”で送り迎えしてくれたことを思い出します。
そのとき彼はまだ高校生のように若く見えましたから、実際僕よりずっと若いはずですが、貫禄がありますね。
ー続くー