第6日目(10月23日) :
チューリッヒから電車でフランスへ入ってコルマールへ。
コルマールは、フランス最東部のドイツ国境近くに位置する小都市です。
歴史上、ドイツ領になったりフランス領になったりを何度も繰り返してますから、言語も文化も両方が混じり合った感じがします。
この地には、美術好きには結構知られているウンターリンデン美術館があり、マティアス・グリューネヴァルトの『イーゼンハイムの祭壇画』をはじめとするドイツの中世絵画および工芸品を展示しています。
ここも撮影禁止でした。
しかしコルマールの見所は、何といってもその町並みです。
中世からルネッサンス期に作られた町並みが運河と共にそのまま残されており、街を歩いているだけで数百年前の世界に迷い込んだ気持ちになれます。
第7日目(10月24日) :
コルマールから電車でストラスブールへ。
ストラスブールはアルザス地域圏の首府であり、その旧市街全域がユネスコ世界遺産に登録されています。文化的にはコルマールと同様、ドイツの影響が強く残っています。
この街を訪ねた目的のひとつは、ノートルダム大聖堂です。
11世紀から建て始めて15世紀に完成した建築の外観は壮大であり、窓には多数のステンドグラスが残されています。
もうひとつの目的は、大聖堂の隣にある博物館です。
ここにも多数のステンドグラスが展示されていて、それらを手に取るように間近で見られるということはめったにできない貴重な経験です。
しかしその中で何より注目すべきは、「キリストの頭部」でしょう。
このステンドグラスは、1880年頃、ヴィッサンブールで発見され、1923年にこの博物館の所蔵となりました。
1050~1070年の制作と推定され、フランスで(または世界で)1番古いステンドグラスと言われていますが、但し条件付です。
絵付けが施されていて、しかも1枚の完全なガラス片として残されているものとしては、ということです。
つまり、絵付けされていないものや、破損して断片になったものでより古いステンドグラスは他に存在しています。
パリの工芸学校では模写の課題となっており、僕も学生のとき見に来たことがあります。それ以来の対面ですから30数年ぶりでした。
ボザール教室でも同じように課題としています。
ストラスブール駅の外観。
この古い歴史ある町にして、この建築デザインです。
過去の遺産に安住せず、新しい世界へ乗り出していこうとする気概が感じられます。
その町の玄関、または顔とも言える場所に、そういった人間の熱意を盛り込むということの大切さを考えさせられました。
ー続くー