今年の夏もまた随分と蚊に刺されました。
釣りに行っても、キャンプに行っても、何故か僕だけが狙われるケースが圧倒的に多く、どうもそういう体質らしいのです。
そんなことを言うと「血液型は?」なんて聞かれたりもしますが、専門家によると蚊に人間の血液型を嗅ぎ分ける能力はないそうで、蚊は二酸化炭素、つまり人間の吐く息に惹きつけられるということですから、多分僕は二酸化炭素を排出する量が多いのでしょうね。
地球の温暖化に人一倍加担するアンチエコ人間らしい。
それはともかく、蚊に刺されたときはどうしていますか?
何もせずに放っておくという人もいるでしょうが、僕ぐらい頻繁に刺されると、とても放っておけるものではありません。
あちこち痒くて何も手につかないほどになりますから、痒み止めの薬が欠かせないのです。
僕が子供のころから使っているのは「メンソレータム」、 この塗り薬を知らない人はまずいないでしょう。
製造販売していた近江兄弟社は1974年に倒産し、大きな新聞記事になりましたが、僕はそのとき初めてウィリアム・メレル・ヴォーリズという著名なアメリカ人建築家が近江兄弟社を創設した一人であることを知りました。
それまでは近江という姓の兄と弟が経営する会社だろうと勝手に思い込んでいたのです。
その後ロート製薬がメンソレータムの製造販売権を取得し、さらに米国のメンソレータム社を買収して現在に至るのですが、再建した近江兄弟社がメンソレータムの商標を使えなくなったため、「メンターム」という名前で、缶蓋のイラストも変えて販売するというややこしいことになっています。
中身はほとんど同じですから効用に違いはありませんが、僕はなんとなく近江兄弟社に肩入れして左側の缶を愛用しています。
ちなみに、会社名の”近江”は滋賀県の近江で会社を起こしたからですが、”兄弟”を付加したわけは、キリスト教の伝道者でもあったヴォーリズが”人類皆兄弟”の精神を大切にしようと考えたからだそうです。
ヴォーリズの設計による建物は日本各地にあり、その数1600にも及びますが、北海道の北見市にあるピアソン記念館がそのひとつであるとわかったのは比較的最近、1995年のことです。
それを知って以来ずっと、蚊に刺されてメンタムの缶を取り出すたびにピアソン記念館を思い出し、訪れたいと願いつつ機会がありませんでしたが、先週の日曜日、ついに願いを果たしました。
仕事ついでの家族旅行、気持ちよく晴れ上がった秋の朝、開館時間前に到着した我が家族は、ピアソン会理事の樋口氏に快く迎え入れていただき、その上丁寧な解説までしていただきました。
樋口氏の説明からも感じ取れたのは、建築物の設計がどうのこうのということより、建物が果たしてきた役割の大切さです。
キリスト教宣教師であったピアソン夫妻はこの建物に住み活用しながら、周囲の人々に多大な影響を与えを続けました。
「建築物の品格は、人間の人格の如く、その外装よりもむしろその内容にある」としたヴォーリズの設計理念を、忠実に具現化したと言っても良いかと思います。
窓辺のただ住まいになんとも言えない品格を感じてしまうのは僕の思い込みかも知れませんが、”淡色のシンプルな幾何学模様ステンドグラスを入れたらもっと素敵になるんだがな”などと思いつき、その様子が現実の如く瞼に浮かぶのはステンドグラス制作者の病気みたいなもの、口には出しませんでした。