ほとんど毎週のTSUTAYA通い、先週は古い映画を1本借りてきました。
ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の「静かなる男」~The Quiet Man~(1952年公開)です。
1979年の秋、パリの国立映画館で一度見た作品です。
何故そこまで詳しく覚えているかというと、その年の6月にジョン・ウェインが亡くなっており、シネマテック(フランス国立映画館の名称)で、確か「ジョン・フォード~ジョン・ウェイン 黄金のコンビ」というようなタイトルの追悼上映会が1ヶ月ほどにわたって開催され、その間足しげく通った記憶があるからです。
格別ジョン・ウェインが好きというわけじゃないけれど、今年は彼の没後30周年記念(誰も言ってないようですが)ということで、1本借りてみました。
内容は、ジョン・ウェイン演ずる主人公がアメリカからアイルランドに移住して現地の女性(モーリン・オハラ)と結婚するものの、風習の違いから様々な騒動を惹き起こし、最後は大暴れしてハッピーエンド、普段は大人しい男だってやるときはやるさ、といういかにもアメリカンな映画です。
”アメリカン”と言えば、つい最近のことですが、僕が長い間フレンチもしくはヨーロピアンだと思っていたものが、実は生粋のアメリカンだったということがありました。それは「シフォンケーキ」というあのシンプル極まりないふわふわのケーキのことです。
シフォン(chiffon)がフランス語だったもので、てっきりフランス製のケーキだと思い込んでいましたが、知人がシフォンケーキの専門店を開くことになって、ちょっと気になり調べてみたら下記の通りでした。
シフォンケーキ(chiffon cake)は、スポンジケーキの一種。 1927年にアメリカ合衆国カリフォルニア州の保険外交員ハリー・ベーカー(Harry Baker, 1884-1984)によって考案され、食感が絹織物のシフォンのように軽いことから名付けられた。ベーカーはレシピを公表しなかったため、その製法は長く謎とされていたが、1948年にレシピがゼネラルミルズ社に売却され、ベーキングパウダーを用いず、泡立てた卵白(メレンゲ)とサラダ油だけでその食感がもたらされていたことが明らかにされた際には、当時の常識を覆す発想として大きな反響を呼んだ。ーWikipediaより抜粋ー
そういえば、フランスでこの種のケーキを見た覚えがありません。
フランスのケーキは普通、綺麗に飾り立てて、食べる前にまず見て楽しむ事を目的にしています。
よくできたケーキは、絵画にも見劣りしないほど芸術的で、視覚に訴えるのみでなく、聴覚にも刺激を与えてくれます。
例えば生クリームの連続した波型がピアノの音質を、チョコレートの茶色の輝きがラテンのリズムを連想させ、上に乗せられたイチゴやキウイやレモンの鮮やかな色彩は、歌うように交わす人の声のような気がします。
近頃新聞とともに配られる折込チラシには、クリスマスケーキの写真が目につきますが、そのまあなんと賑やかなこと。打楽器や金管楽器が勝るブラスバンドのようです。それはそれで楽しいクリスマスの到来を告げるファンファーレの役目を果たしており、子供たちには非常に受けが良いのですけど。
それに比べてシフォンケーキのこの静けさはどうでしょう。
視覚に強く訴えるわけでもなく、聴覚ときたら、しんしんと降り積もる雪の音のようです。
ジョン・ウェインにちなんで、「静かなるケーキ」~The Quiet Cake~と命名してもよいくらいです。
先月のこと、友人の友人である保坂さんという女性が、シフォンケーキの店を開きたいということで、僕のところへ店名についての相談にみえました。ご自身で捜してきたいくつかの言葉の中に「calme」(カルム)というフランス語があって、これは計らずも英語のquietにあたる言葉で、静けさとか穏やかさを表します。
これがいいね、と即決定!僕が助言したのは”le”(ル)という男性冠詞をつけた方が良いですよということだけ、店名は「Le Calme」(ル・カルム)となりました。
保坂さんのシフォンケーキは、アメリカの大企業アムウェイのステンレス製鍋で焼くというちょっと変わった方法で作られます。
”鍋でケーキなんて焼けるの?”と最初は思いましたが、これがご覧の通り素晴らしい出来なのです。
ケーキの向こうに見えるのはシフォンケーキの型で、これごと鍋に入れて焼くのだそうです。
材料にもこだわりがあって、今では全国的に有名になった江別製粉の小麦粉を使用し、卵や牛乳も地元産の中から厳選しています。
地味なのは外観だけで、一口食べるとわかります。”やるときはやる”ジョン・ウェインのごとく、頼りないほどにふわふわとした食感でありながら、それと同時に力強い自己主張を感じる不思議さは、誰にでも勧めてみたくなる新体験です。
開店のお祝いに店名入りのカード入れを作りました。
ついでにボザール工房用のも作っちゃいました。
店は同じ江別市内、ボザール工房から車で5分ほどのところに、本日開店!です。