川風便り

キスリングの灯ーその18-

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「キスリング展」は1ヶ月遅れで開催することができたが、その後1週間で6月になった。
当初の予定では4月25日から開催だったから、季節感を考えて「ミモザ」と「サクラ」をテーマにしたキャンドルホルダーを作ったのだけれど、今となっては若干季節外れの感があるのは否めない。
そこで「夏」をテーマにしたホルダーを新たに作ることにした。

サン・トロペ

このブログシリーズの第4回目で「サン・トロペの昼寝」について記述している。事前にいただいていた展覧会目録に載っていたからだが、その絵が北海道展には展示されないことを後日知った。

「キスリングの灯ーその4-」

とても残念だけれど、「サン・トロペ」と題名の付いた絵は他にも2点展示されているので、そちらに注目することにした。

「サントロペ風景」1917年


「サン・トロペ」1918年

僕は学生時代にサン・トロペへ行ったことがある。
地中海に面した南フランスの小さな港町だ。
高級リゾート地ではあるが、近隣にあるカンヌやニースのような大都市ではなく、車で行ったらうっかり通り過ぎてしまいそうなほど小さな町だ。
南仏はどこでも同じようなものだが、降り注ぐ柔らかい光の中をゆっくりと音もなく時間が流れている気がして、3日も同じ町にいたら日にちも曜日も忘れてしまいそうになる。

キスリングの絵を見ていると、彼も全く同じ感覚に浸っていたことが分かる。この感じ、これをガラスの色に置き換えて焼き付けることはできないだろうか。

初夏の色

初夏の南フランスをイメージし、キスリングの描いたサン・トロペの風景をモチーフににして、新しい色合いのキャンドルホルダーを作った。

南フランスはこの時期に一斉に花が咲き始め、町全体が日ごと鮮やかに彩られていく感じがするのは北海道と同じだ。
違っているのは空よりも明るいスカイブルーの海なのだが、何故かキスリングはその海をほとんど描いていない。
僕も彼に倣ってサン・トロペの海の色を強調しなかった。夏の予感と共に、どこか気だるい空気感も出ていたらいいなと思う。

―続く

 

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