雑記帳

Elefante Giallo(黄色い象)ーその10ー

このエントリーをはてなブックマークに追加

グリザイユ絵付けの所定の温度650度まで達するのに、僕の電気炉では約2時間かかり、その後”徐冷”という工程が必要です。字の通り、”徐々に冷ます”のですが、それに約20時間を費やします。つまり今日の夕方炉入れをしたなら、取り出すのは明日のほぼ同時刻ということになります。

で、取り出したのがこちら。

焼成前と何も変わってないかのように見えると思いますが、グリザイユはしっかりとガラス化し、その一部はガラスに浸透して一体化していますから、今後千年以上は剥がれることはありません。

さて次は、黄色の着色です。ステンドグラス絵付けの黄色には2種類ありまして、ひとつは14世紀から使われているシルヴァーステインという絵の具です。酸化銀をガラスに反応させて黄色に発色させます。もうひとつは17世紀に登場するエマイユという絵の具で、ガラスの粉が主成分です。色味としては、シルヴァーステインが少々オレンジがかった黄色、エマイユはレモンイエローですが、高梨君の要望がレモンイエローだったから、エマイユを使用することに決定しました。

黄色のエマイユを、必要な部分に筆で塗ります。”塗る”と言うより”乗せる”感じです。

塗ったままでは発色にムラが出るので、バジャーブラシ(アナグマの毛の刷毛)で表面を撫でます。

高梨君は「黄色の強弱はいらない。均一でいいよ」と言ってましたが、やはり少々グラデーションを付けた方が”温もり”と”柔らかさ”が出る気がして、勝手ながらエマイユを上方に寄せました。

乾燥したら、余分なところを削り落として絵付け作業終了です。

再び電気炉に入れて、2回目の焼成。エマイユは焼成前と後では全く見え方が変わる絵の具です。ガラスの成分、焼成温度、絵の具の量、その他ちょっとした条件の違いで思いもよらぬ結果を招くことがあります。意図した発色が得られるかどうか、期待と不安と共に炉の中へ。

―続く

このエントリーをはてなブックマークに追加