川風便り

懐かしき庭-その14-

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ステンドグラスをどれほど正しく組み立てたとしても、それだけで十分な強度を持たせることはできない。鉛桟の寿命が尽きる100年後までそのままの姿を保つには”補強”が必要だ。

補強

鉛桟はその柔らかさによってガラスを衝撃や加圧から守ってくれるが、その反面自分の重さで徐々に曲がりはじめ、数十年後にはパネル全体が湾曲しガラスの破損を招く。
そこで昔の人が考え出したのは、柔らかい鉛桟に対して固い補強を付け加えることだった。
補強の仕方にも色々あるけれど、最も基本的なのは、パネルの内側20~30㎝間隔に鉄棒を水平に渡して、パネルをそれに括り付けるやり方だ。棒の端は建物躯体に埋め込まれているため、ステンドグラスはつまり鉄棒に吊り下げられた状態で、その重量の大部分を建物に預けていることになる。

西欧宗教建築窓のステンドグラスは、大体こんな感じに見えると思う。
太い縦線は建築躯体の石柱、次に太い横線は鉄製の框(かまち)。この二つに区切られた1m四方くらいの面積が一枚のステンドグラスパネルだ。どんなに巨大なステンドグラスも、適度な大きさに分割されたパネルの組み合わせでできている。
そのパネルを水平方向に横切る細い線が補強の鉄棒だが、西欧で教会のステンドグラスを見た人のほとんどは、この補強棒の存在に気が付いていないと思う。それはステンドグラスが相当の大面積であり、全体を見るにはかなり離れたところから見る必要があるからであり、図柄や色彩に目を奪われているからかもしれない。

しかし日本では全く事情が異なる。
日本で作るステンドグラスは比較的小面積であり、すぐ近くで見ることが多い。西欧の伝統的補強方法ではやたらに鉄棒が目立ってしまい、なんともやぼったい感じがしてしまうだろう。
それでもこの仕事を始めた当初は、他に方法を思いつかなかったので、もっぱら鉄棒式の補強に頼っていた。

1985年、札幌市内の小学校に設置した僕の作品。
最初に補強棒の位置を決めてから、それが目立たないようにデザインした。
上部の縦線補強棒は補強としての効果が半減するのだけれど、横幅がありすぎるので施工上仕方がなかった。

その頃の仕事はどれも補強の仕方で苦労しており、補強のためにデザインを犠牲にすることも多々あった。しかしそれから数年後に救世主が表れた。

ー続く

 

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