9日目(10月26日)続き :
オルセー美術館は、1900年のパリ万博開催に合わせて建築されたオルセー駅が前身です。
ガラスと鉄骨の全体構造や、アーチ状の屋根、大時計など駅舎時代の面影を残した美しい建物です。
別名印象派美術館とも呼ばれており、マネやルノワール、セザンヌ、ゴッホなどお馴染みの画家たちの絵の他、家具や装飾品など合わせて2万点が展示されています。
閉館時間の18時前、追われるようにオルセー美術館を出てリヨン駅へ地下鉄で移動し、駅近くの新しいレストランで夕食。
食事には、南仏のマルセイユから出てきてくれた友人カップルが同席し賑やかになりました。
Françoise(フランソワーズ)とは30年来の友人ですが、同伴のDaniel(ダニエル)とは初対面でした。
フランソワーズには成人を過ぎた二人の息子がいますが、20数年連れ添ったご主人とつい最近離婚して新しい伴侶をみつけました。
しかし、正確に言うと結婚はしてなかったので”ご主人”でもなければ”離婚”でもないわけです。
ダニエルとも結婚はしないらしく、僕には”親しい友人”と紹介してくれました。
ダニエルは高校で農業関係の科目を教えており、やはり子供がいるそうです。
こうした関係はフランスでは決して珍しくはなく、社会的にも法律的にも男女の、あるいは同性同士の新しい関係が認められています。
1999年に成立した通称PACS(パックス、仏語:Pacte Civil de Solidarité)は、連帯民事契約法とも訳されていますが、簡単に言うと準結婚制度です。通常の結婚制度に比べて、性別を限定せず、関係解消が容易で、貞操義務はなく、財産の贈与が自由という利点があるため、フランスのみならず同様の制度が欧州全体に拡がりつつあります。
因みに、同法成立と同じ1999年のデータによると、フランスの婚外子率は全体の41.7%でしたが、同年日本では1.6%でした。フランスでの非婚カップルの多さを裏付ける数字です。
日本人には馴染みづらい男女関係ですが、世界的な趨勢ですから、いずれは日本もそうなるでしょう。
同様にもうひとつ日本人に馴染みづらいのはフランスのbise(ビズ)という習慣です。
親しいもの同士が左右の頬っぺたを擦り付け合って「チュッ、チュッ」と音をたてながらkissのまねをするのですが、このタイミングが難しい。
まずするかしないか、するとしたらどちらから仕掛けるか、左右どちらからするのか、何回繰り返すのか(1~4回まで選択可)、本当に唇を相手の頬につけるのか、手を添えるべきか否か、等々瞬時に判断して実行または受けなければなりません。
レストランを出たところでフランソワーズたちとお別れすることになり、超社交的なフランソワーズが全員にbiseをし始めました。ほとんどの人にとって生まれて初めての経験だったはずですが、なんとか全員無事に受けこなしていました。
ー続くー