雑記帳

魚の絵

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5月のある朝のことです。
暖かい春の日が差し込む工房の一室で、僕は壁に貼ったカレンダーをぼんやりと眺めていました。

近頃どうも絵がうまく描けないのは何故か?
とくに魚の絵が描けない。
絵はイメージで描くものだ。
写真を見ながら上手に描き写しても、それはただのコピーであって、表現とは程遠い。
表現をするにはイメージを強く持たなければいけない。
そのためには生き生きとした実体験が必要だ。

というようなことを考えてますと、カレンダーの最後にある翌月1日の文字がキラリと光って見えました。道南のヤマベ釣りの解禁日は6月1日、これは魚に触れてこいという天の啓示ではないか?
1日は月曜日、世の多くの人々は仕事をしている平日であるが、僕にとってはこれも仕事のうちと考えて良い、日程的に少々難儀ではあるけれど頑張って出かけてこようと思う、とその夜妻に告げました。
妻の反応は今ひとつ思わしくなかったものの、いつも展覧会でお世話になっている「ギャラリー村岡」の村岡氏と、「ウッドいのうえ」の井上氏も、忙しい中快く協力同行を申し出てくれているから失礼があってはならない、というようなことをさらにのたまって、めでたく十数年ぶりの解禁日釣行と相成りました。

釣りの場所は、函館から車で30分ほどで到着する茂辺地川の中流、前日の雨にもかかわらず川は澄み、風はそよぎ、眩しいほどに木々の緑が萌えて、最高の釣り日和でした。あとは魚が釣れたら文句なしだったのですが・・・。

ヤマベ 解禁日 茂辺地川僕が釣ったのはご覧のようなカワイイやつ一匹でした。
それでも今年初めての釣果、いとおしさのあまり食べてしまいたいくらいでしたが、フライマンのルールに従ってリリース。
内心、「この次はえさ釣りにして持ち帰ろう」と思いつつ。

ヤマベ ステンドグラス エッチングさて、戻りましてからは、当然のことながらすらすらと絵が描けるわけでありまして、あの日の川の様子を思い出しながらイメージを膨らませてエッチングしました。
図鑑の写真を見ながら描くのと、自分で撮った写真を見ながら描くのとでは大きな違いがあります。

あとはこの作品が売れてくれたら、釣りも仕事のうちなんだと、より力強く主張できるのですが。

ー続く

■関連情報:2009.07.27~08.22 函館:ステンドグラス作品展「魚」

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