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懐かしき庭-その12-

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絵付け作業の順番として、シルバーステイン絵付けは通常最後に行う。また、ガラスの裏側つまり外部に面している側に施すのが普通だ。その理由は二つある。

前にも書いたように、昔はガラスを焼くという作業が大変なことだったので、できるだけ焼成回数を少なくしたかった。それが第一の理由。
表面にグリザイユ絵付けしたガラスピースは、裏面にシルバーステイン絵付けをして同時に焼くことができる。そうすれば、線描きと調子付けを含めたすべての絵付けを一度の炉入れで焼き付けるという芸当もできたはずだ。

二つ目の理由は耐候性だ。
グリザイユは、焼成後ガラス化してその一部はガラスピースと一体化する。しかし一部は表面に焼き付いているだけだから、風雨が直接当たれば数十年の間に溶け落ちてしまう。ガラスの室内側に焼き付けられたグリザイユは数百年は絶えることができる。
対してシルバーステインは、絵の具がガラス表面に焼き付くのではなく、ガラス自体を変色させる化学反応なので、風雨にさらされても簡単に溶け落ちることはない。
だから外面に施工することができる。

シルバーステイン絵付け

シルバーステイン絵付けの実際の作業はいたって単純だ。
ガラスをすべて裏返しにして、黄色くしたい部分にシルバーステインをたっぷりと乗せる。乾いたら余分な部分を削り落とす。あとは焼成するだけ。

かつては微妙に温度調整をする必要があったが、今はグリザイユの焼成温度と全く同じ650℃で間違いなく美しい黄色に焼き上がる。

焼成後、炉から取り出したガラスピースの見かけは入れた時とほとんど変わらない。
絵の具の主剤(土)をガラス面から削り落としたとき、初めて黄色の発色を視認することができる。

シルバーステインの非常に優れて魅力的な点は、その透明性にある。
グリザイユ絵付けは光を遮断し透明性を奪うものだが、シルバーステインは色味を変えるだけで透明性は失われない。中世の絵付け職人たちがこの絵の具を好んで多用した理由はそこにあると思う。

これでガラス加工のすべてが終了したことになる。
次は組み立てだ。

ー続く

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